Twitter上で、【karoshi 過労死の国・日本(3)繰り返される悲劇】先進国なのに…24時間働かせても合法+(1/2ページ) - MSN産経ニュースという記事を知りました。
偶然ですが、『英国メイドがいた時代』の中で、日本の36協定・ILOの話に触れています。英国メイドは労働時間制限なし、労働法の保護なしでした。何かこう、「メイド」というと過去の職業のように思えたり、現代の海外事情のように思えたりするかもしれませんが、「労働条件」という観点で見ると、「どこが変化して、どこが変わっていないか」と現代の状況を相対化できます。
今を生きているので、「働きやすい理想的な環境はなんなのだろうか」と考えたり、「なぜ、変わらないのか」と思うところと向き合ったりと、過去を学ぶことは現代に役立つと思う次第です。
その中で今回の夏の新刊『英国メイドがいた時代』は、今の日本を振り返り、現代英国の一面を知り、将来の日本を考えるときに、お役に立てるのではないかと思います。
現代事情の専門家ではないので、まだまだ学ばなければならないところや足りないところもありますので、この本に「答え」があるというわけではなく、「自分で答えを出す機会として、座禅をする場を提供」するようなイメージです。
新刊『英国メイドがいた時代』
あと、『中流社会を捨てた国 格差先進国イギリスの教訓』も、非常にオススメです。経済格差への各階層ごとの認識の相違や、教育支援、就業支援の現場といった社会福祉への観点が広がります。とても丁寧で多面的、かつ分かりやすく作られています。
- 作者: ポリートインビー,デイヴィッドウォーカー,Polly Toynbee,David Walker,青島淑子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2009/08/01
- メディア: 単行本
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ブログでは、こうしたテーマについて、今まで次のような話をしてきました。
メイドや執事の労働環境と、階級の違いによる差異
「2つの使用人問題」を巡る19世紀末時点での女主人の見解
『英国メイドがいた時代』が繋がっていくテーマの補足
最近ではほかに『現代中国の移住家事労働者』を読み始めたところ、冒頭で「使用人」ではなく、「家事労働者」と表記する理由を説明していました。この呼び方は、第二次世界大戦後の英国で見られた呼称の変化の影響を受けたものでしょう。同書に出たglobal circuit(Saskia Sassen)の概念も、どこかで読んだ気がしますので、これも読みたいところです。
中国は万博を開催したり、格差が広がっていたりと大英帝国的な要素が再現しつつ、仮に中国10億人の生活レベルが均質に向上すると、世界の資源は無くなる、との点で大英帝国の発展と違った帰結をもたらす可能性を持ちます。そんなトピックの本を読んだことや20世紀のメイド不足による「生活様式の変更」と重ねてみる で書いたような石油資源の奪い合い、そしてグローバリゼーションへの関心が、自分の中ではメイドを軸に繋がっています。(『まおゆう』で描かれた近代化も、その分野への関心を急速に強めて自分の言葉にしたい一因ともなりました)
『イギリス近代史講義』の著者で英国史の研究家・川北稔先生の関心事として、「グローバリゼーション」と、経済発展の帰結としての「資源枯渇・環境破壊に直面する生活」が挙げられていますが、何気なく、メイド研究はその方向へ向かっているのではないかと思う次第ですし、今の時代だからこそ、扱える領域は広がって、多くのテーマと繋がっていけると思う次第です。
『イギリス近代史講義』〜現代を照らす一冊(2010/12/15)