ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

メインパートはほぼ完了・イラストに添えるテキスト他

近日中にイラストやタイトル、目次を公開します。



これから台割を作りますが、ようやく台割を作るぐらいにリアリティのあるものに仕上がってきました。年2回同人誌を作っていますが、これで多分15冊目でしょうか。コミケに受かってから一度も新刊を落とさずにやってこれました。



今回の本は、これまでの本とは若干方向性が違いますが、前回のスチュワードの話が好きな人には向いていると思いますし、『MAID HACKS』にてメイドや使用人のイメージを「書き換えよう」(HACK)としたように、執事のイメージも相当塗り替えられると思います。



『英国メイドの世界』で当同人誌を知った方にも、また新しい驚きを与えられると思います。さすがに今回は「分厚さ」はありません。



「創作少年・メイドジャンル」ではないような気もしますが、既刊もあるのでご容赦を。絶版になった『英国メイドの世界』のフォローについては、コミケ前後で考えます。


どんな執事の挑戦でも受ける

今日の日記は突然消えるかもしれませんので、ご了承下さい。



夏の夜の夢かもしれません。(書いているのは朝ですが)



昨日、あんなことを書きましたのは「自分が取り揃えた7人の執事」を超える自分が知らない執事がいるのか、それはいないと思う、というテンションで書きました。



それぐらい、今度の執事のキャスティングに自信を持っていますし、その伝え方や、未知の人にも伝わる説得力を持たせようと、本を作っているわけです。



どんな執事の挑戦でも受ける、という気持ちなのは要するに、「ここで紹介した執事よりすごいと、久我を納得させる執事はいるのか? そんな執事を伝えてくれる人に出会いたい」という気持ちからきています。



同人誌を読んでいただくことが前提になってしまいますし、投票を提案して票が集まるのか、ウェブか同人誌でこの企画をやってみようかと、この暑さの中、頭のネジがちょっとアレなステータスで、思う次第。


企画概要(実施は未定です)

・久我の同人誌を読み、7人の執事を知る

・この執事より能力が高い(能力は同人誌で定義)執事を投稿してもらう

・資料を教えてもらえれば自分でも読みます

・資料(実績)からPRしてもらう。PRは説得力があれば構いません。

・投稿の形はウェブサイト、メールなど?

・次の同人誌 or 同人誌を買った読者向けウェブサイト?で投票を行う

・読者投票の発表

森薫先生に参加していただきたい(願望)


執事の参加資格

メイドガイに負けるかもしれませんが、彼は執事ではないので参加できません。

・脳内設定執事や、私の上司は執事の生まれ変わり、とかはお断りいたします。

・悪魔は困るかもしれません。



無駄に双方向っぽい雰囲気、かつ何か出来てしまいそうな気もしましたが、それでも自分が選んだ執事の優秀さが覆らないぐらいの伝え方で望む所存です。『日の名残り』スティーブンスでも、『ジーブス』でも、歓迎です。



最優秀執事決定戦、トーナメントを開始せよ!


妄想具現化

と言うのは、やりすぎで誰もついてこないと思います。



「好き」を競うのは不毛でもあり、「7人で誰が好きか(どの執事に仕えて欲しいか、同僚になりたいか、部下になりたいか)」部門を設け、「どうしてそう思ったか」的なところを落としどころに、読者の反応が知りたいので、集められる工夫をするよう頑張ってみます。



え。頑張るの?



頑張るかもしれません。



メイドやハウスキーパーでもやりたいのですが、資料が足りないので、そこはいずれ。


最後は伝えたい気持ち

執事の資料を整理しながら同人誌の原稿を書いています。現代の仕事との重なりもあって、うまく重なるように作ろうとしたものの、そこに当てはまるエピソードを無理に当て込もうとして、なかなかいいものになっていませんでした。



で、いろいろとやっていくうちに、好きな執事の魅力を伝えたくて始めたのを思い出しました。不遇で結果の出なかった執事がいるのですが、彼の魅力を何とか伝えようと思った途端、テンションが上がってきました。



要するに、自分が好きなことを、伝えたいかどうか、それだけです。自分独自の視点も大切ですが、何よりも、なぜ書くのか、それは好きだからです。



研究とか、自分の立ち位置とか、資料へのこだわりとか、どうでもいいです。何でこの活動をしているかといえば、自分が出会ったすごい人たちを伝えたい、その気持ちだけです。



ただ魅力的な人に出会いたい、執事やメイドやハウスキーパーや、屋敷で働いた人たちに出会いたい。いい面を伝えたい。そして、その人たちの生き方を、伝えたい。



それだけでした。



ということで、最精鋭の執事7名を集めて、お待ちしております。



原稿終わってませんが!



資料が増えすぎて自縄自縛、「正しさ」の陥穽に落ちていましたが、戻ってきました。



行ったり来たりしつつも、日々精進してます。自分の意見を押し付けるのではなく、共感できるような、共通点を感じてもらえるような、読んだ人が明るくなる本を作りたいです。


夏コミ新刊と、目指す資料本のかたち

資料整理がてら、執事の本を作っています。



『MAID HACKS』的なエピソード集を志向していましたが、どうにも真面目すぎるというか、こんな組み合わせで作るやついないだろう的なものになりつつあります。



市場独占です。



元々の同人誌が、「メイド」を制服ではなく、「屋敷で働いてこそ」という関係性で描き、集団で働くその職場に魅力を見出すことでオリジナリティを追求してきましたし、仕事内容に重点を置いてきましたが、今度は「働き方」に突っ込みました。



社会人の友人たちにヒアリングもしました。



働く人に共感してもらいつつ、「それ違うんじゃない? こう思う」的な興味を持ってもらえることも期待しつつ、日本でわざわざ異国の歴史を調べるという意味づけにはなりますね。



個人的に今回の新刊は、外資企業で働く方の視点を今後取り入れ(自分の視点の独自性は海外でも通じると思いますが、共感できる書き方をしているか分からないので)、その上でならば、海外で展開しても読んでもらえる気がしています。



多分、本場イギリスでも、こんな本はないはずです。



久我の志向的には、「専門家/研究者」向けに作っていません。そもそも作れません。



大学の研究者ほど真剣に勉強してきたバックグラウンドもなければ、コネも研究環境もありません。社会人として働いたお金をつぎ込み、資料を買い、余暇を費やしているので、同じことをできるはずがありませんし、その努力をしてきませんでした。



なので、必然的に、違う道に行きます。「けもの道」なのか「別の高速道路」なのかはわかりませんが。



元々興味が深い層に応えるのではなく、興味が少しあったり興味のない人が、本を作る時に思い描く対象読者です。大切なのは「資料のレベル・深さ」ではなく、「読者に共感してもらえる視点」です。



端的に言えば「同じことをしたら埋没するし、同じことをする実力はないし、そもそも自分がやる意味がない」ので、「違うことをしているから自分がやる意味がある」、というところが、スタンスといえるでしょうか。



さらに、イギリスで使用人を研究する人々以上に、学会向けの専門研究や発見ができると思えません。日本人である自分が同一の対象を研究する理由も、自分の中にありません。あくまでも、発見や考察が目的ではなく、自分が好きな対象を、「読んで楽しい」「わかりやすい」「発見がある」ように伝えられる本を目指しています。



要は、歴史書と、旅行ガイドブックの違いです。(或いは歴史書と、歴史マンガ本) あんまりマイナーすぎると旅行する人がいないのですが、そこは旅先の魅力を伝えるのが役目ということで、目に触れられるようにするのが、勘所です。



あ、司馬遼太郎さんや塩野七生さんの方が、志向としては近いかもしれません。



友人に「最近、執事の(仕事の)ことしか考えていない」と告げると、「ヘンタイ」といわれました(笑) その点では相当真面目に馬鹿をやっていますので、いい意味で頭が悪い本になりそうです。



電車に乗っていても執事のことしか考えていません。『英国メイドの世界』を作ってから、同人誌では燃え尽きた感じもしていましたが、久しぶりに集中力が高まってきました。


若い家庭に勤めた執事の将来性と順応性

以前、何度か触れている、インドの王族やいろんな屋敷に勤めた不幸な執事の話をした際に、仮説として「執事は、子供がいる屋敷に仕えるのが良いのでは? 後継者がいれば主人の死で生活が激変する可能性も低く、後継者の資質を見る機会もある」と考察しました。



「最高の執事としての条件再び」



屋敷を選ぶ大切さの基準としてあげたものですが、この仮説を裏付けるものとして、「Astor家の執事たち」をあげました。この時点で根拠はありませんでした。



久しぶりにEdwin Leeの手記を読み直していると、当時はすっかり意識していなかったのですが、彼がAstor家に仕えた当初は25歳ぐらいです。完成した時期のイメージが焼きついていましたが、そんなことはありません。



そこでもうひとつ忘れてはならないのは、女主人Lady Nancy Astorの年齢です。Leeが25歳の時、Ladyの再婚後の長子William Astorは5歳でした。WikiによるとWilliamは1907年08月生まれなので、Leeが合流した時は1912〜13年と思われます。



http://en.wikipedia.org/wiki/William_Waldorf_Astor,_3rd_Viscount_Astor



この時期、1879年生まれのLady Astorは33〜34歳、想像以上に若かったです。



http://en.wikipedia.org/wiki/Nancy_Astor,_Viscountess_Astor



そこから考えると、Leeは若干主人夫妻よりも若いものの、主人と似た視点で子供たちの成長を見ることもできますし、主人たちと同じように年を重ねていくことができました。



この立場にいられた使用人は、どれだけ大きな幸せを得ていたのでしょうか? そこには、輝かしい未来がありました。子供たちの未来だけではなく、30代と壮年期を迎えつつある主人夫妻も、少し世代が下のEdwin Leeにとっては、仕える喜びを得られたのではないでしょうか?



年齢を意識しながら、使用人の職場遍歴を見ないと、見誤りますね。完璧な執事といえるLeeも、手記を書いた時点では完成していますが、その若い頃は若い頃なりに失敗をしたり、いろいろな指導を受けていたりするので、勉強になりました。



もちろん、若ければいいというものではありません。通常、若い場合は財産相続ができておらず、それほど裕福ではありません。そのため、決して賃金が高いとはいえません。彼らの屋敷はどちらもお金持ちだからこそ、若くして使用人にも最高の待遇を与えられ、時局が難しくなっても、屋敷を維持できました。



若い夫妻に仕える、若い執事、若い上級使用人たち、を描いてみたいですね。



今の日本で言えば若い社長、若い社員、というベンチャー企業の雰囲気に近いですかね? 相続前の貴族の若夫婦と財政基盤のところや待遇なんかは似ています。



若い考えの人の元で働くには柔軟性が必要で、成功した人間は難しいこともありますね。



対照的に、若いエリザベス王女夫妻(今のエリザベス女王が20代前半の頃!)が初めて屋敷で新婚生活を始めた時に雇われたのは、Windsor公爵やギリシャ国王に仕えた40年以上のキャリアを持つ、「超一流の執事」Ernest Kingでした。何がすごいかというと、Windsor公爵からスカウト、ギリシャ国王もエリザベス王女の仕事もすべて「他薦」です。



個人的には、『日の名残り』でスティーブンスに批判された執事(自分が目立ちすぎる人)のモデルではないのかと思えるほどです。



しかし、Ernestの輝かしい経歴も、若い王女の元では長く続きませんでした。



彼は自分が頂点で全権を持つ仕事に慣れていました。未熟な王女の干渉を受け、王宮の複雑な権限に縛られる生活に混乱し、さらには王女を守ろうとする侍女との間に深刻ないさかいを起こし、口を滑らせた結果、解雇されます。(厳密には、侍女の嫌味を受けて感情を爆発させ、「こんな仕事うんざりだ、辞めるといってもらえますか?」といってしまったのを、侍女が正直に告げ、事務手続き化してしまう)



とはいえ、これも、もしもErnestがこれまでの成功体験を捨て、虚心坦懐に、「家族に仕える・見守る」事に徹していれば、或いは若い頃に参加していれば、違った結果になったかもしれません。彼は「自分の仕事」を追及するためには、心の中では、主人にも批判の矛先を向けました。Ernestは少なくとも、最高の仕事を果たすためには、主人を邪魔にしかねませんでした。



最高の執事とは何か?



最高の仕事は主人へ提供するサービスとしての手段であって、「自分が考える」最高の仕事をするために主人がいるわけではない、というところの差なのでしょうね。



いろんな執事をいろんな角度で比較すると、本当に面白いです。過去には気づかなかった視点で、まだまだ魅力を掘り出せそうです。



本当はハウスキーパーでも書いてみたいのですが、資料がなさすぎなのです。こればっかりは、イギリスの大学図書館でしょうか……


本日深夜『日の名残り』放送&執事関連情報

執事やメイドの映画や情報に枯渇していた頃の人間には、懐かしくも原点といえる映画です。



映画天国 「日の名残り」日本テレビ:25:59〜28:00)



地上波は久しぶりでしょうか? 記憶にありません。『エマ』に登場する執事スティーブンスの名前の由来、ともいえますし、海外で執事というと、スティーブンスかJeevesか、といえるぐらいの双璧の片方でしょう。



ハウスキーパー役に光を当てた点でも、稀有な作品ですが、ここで描かれている執事はあくまでも「要素の一部」でもあります。この分析はこちらが参考になります。







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で、ものすごい驚いたのが、この筆者である新井先生が、ある出版社のページにて、「執事喫茶訪問」のことを書いているのです。階級に詳しく、英国生活も長い専門の方の視点も興味深いのでご紹介です。



新井潤美「“自分だけ”の存在 執事の魅力」 2008.11.25


日の名残り』は、DVD版もしばらく絶版でしたが、今は数年ぶりに安いのが再販されましたね。







個人的には映画→小説、の順番が良いと思いますが、いずれにせよ「片方だけ」しか知らないのはもったいないので、どちらにも接することを強くオススメします。



日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)





久我は過去にスティーブンスと、自分が知った実在の執事の比較を行いました。



『日の名残』、或いは「上級使用人・執事」補遺(2007/02/11)



これをベースにしたテキストは完成し、同人誌『英国メイドの世界』の執事解説にて考察を終わらせていますが、映画を見た後にお読みいただければと思います。



なんにせよ、未視聴の方は是非お楽しみ下さい。


もうひとつのキャリア〜お金の話が出来る執事

最近、新しく執事の手記を入手しました。1940年代に刊行されたようですが、これが今までの執事のイメージが変わるぐらいに視点が違います。彼は公爵家でフットマンも経験しましたし、最終的に執事に落ち着きましたが、その途中で重ねてきたキャリアは異色中の異色です。



家庭内使用人を経験しつつ、ホテルのウェイターやパブの経営、フラット(食事つきの長期滞在ホテルみたいな仮住まいの場所)やクラブでの管理職(スチュワード)、そしてカフェの経営、ホテルのマネジメントまで行うのです。



フットマンや執事の将来的なキャリアとして、他の道筋があるのは知っていましたが、ここまで明確に「お金を稼ぐ」ビジネスに着手した執事は始めてみました。



お金に縁が深いというか、幼い頃に人助けをしてお金を貰い、その後、ホテルの同僚のメイドの進めで賭けた競馬で大もうけし、18ヶ月ぐらい働かず、療養したのに始まり、その二十年後ぐらいでしょうか、別の機会ではまた競馬の儲けでサイドカーも買いました。



第一次大戦で千ポンドの貯金を失ったり(遺産ではなく自力で短時間でそこまで貯蓄した使用人を知りません)、何度も投資したお金を失ったりと、多少の山っ気こそありますが、それにしても引く手があまたと言うか、有能な「稼げる」人物で、就職先にはまったく困っていませんでした。



同時代を生きた執事は就職先を見つけるのに苦労しましたし、「クラブ」での仕事も探したが見つからないと嘆きましたが、それは「お金を使うだけの使用人」と、「お金を稼げる才能を持つビジネスマン」の違いにあったのでしょう。



両者は使用人登録所(Registory)を利用しましたが、成功している執事は「彼らが得をするようにも」考えていました。彼はGive and Takeで、関係者が得をするような提案能力を持っていました。この手記の執事は本当に頭を使い、いろいろなところで工夫し、稼ぎました。



何が驚くかと言うと、本当にあらゆるところでお金の話が出ていることです。カフェの経営では「コストこれぐらい」「ひとりあたりの利益はこれぐらい」と試算していますし、「主人たちは『10人ぐらいの小さなパーティをしたいの』というけど、それにはお酒の準備や片づけまで含めてこれぐらいお金かかるんだよ」と数字を見せたり、とにかく数字に強いのです。



ホテルやフラットで経営者として人を使う際も、頭を使いました。第一次大戦前後にして、彼はメイドへの支払を「時給」にして、変則的な勤務をしても報酬を貰いやすいようにしました。



人を雇うにしても、彼の場合は「お店の収益」が頭にあり、他の使用人のように「必要だから雇う」ではなく、「利益を上げるのに必要な人件費を支払う」ことを念頭においていました。メイドの人件費が制度によって中間搾取されている場合には、他の抜け道を考案し、実際に汗を流すメイドが多くもらえるように、システムを変えました。



お店を経営するうえでの公的規制があっても、交渉可能なところがないかも考えて、規制すれすれのところで営業を行なう場合にも、事前に地元の警察に確認をして認めてもらい、「そのお店での最高売上」を叩き出しもしました。



もちろん、他の使用人とは違う事態にも遭遇しました。職経営を任されたクラブやホテルの上位の経営者が交代することで経営方針が変更され、働き続けられないと判断し、辞めたことも一度や二度ではありません。



ところが、本当に有能だったのか、すぐ仕事を見つけてくるのです。彼が仕事に困った様子は、ついに描写されませんでした。



一番面白かったのは、夏場は忙しい避暑地のホテルで経営の仕事をしていた際、ホテルのクライアントだったある富豪の女性にスカウトされたエピソードです。彼女が冬場に滞在したい屋敷を、彼女の弁護士の依頼を受けて手配し、交渉し、実際に交渉成立させた後は、執事として屋敷の切り盛りを行いました。



屋敷で女主人をもてなす時も、彼はお金を握っている弁護士に確認し、「お金、使いすぎていない?」と聞きました。利益を常に考えてきた彼にとって、使用人の仕事に戻った時、それが「お金を使うだけの仕事」だということが、頭から抜けなかったのでしょう。この視点は、他の執事にはありません。



どんなに最高の執事であっても、そのサービスによって、「主人に利益を出す」ことは出来ません。あくまでも主人の財産を使い、最高のもてなしをするのが、その限界です。



しかし、今回出会った執事は経営者として利益を出す事業に多く携わり、経営者としては成功していました。共同出資者や銀行と言う外的な要因で何度か貯金を失う点では「人を見る目」に甘さがありますし、競馬好きで競馬で儲けた額がすごすぎ、事業に対しても山っ気がありましたが。



人をもてなし、マネジメントする。最高のサービスを提供することで賃金を受け取るだけなのか(使用人)、儲けを得るのか(経営者)、活躍の場は違いましたが、屋敷で働く執事も意識を変えて機会を変えれば、彼のようなキャリアを築けたはずです。



貯金をして執事が使用人職を辞め、ビジネスを立ち上げるという話自体は何度か見てきましたが、実際にその道に進み、成功した人物として、この本は参考になります。とはいえ、ビジネスに必要な要素は創意工夫であり、この執事の性格(必要があればルールを変えていく・結果を出すために交渉する)も大きいのかなと思います。



非常に現代的で、ユニークな執事です。