ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

使用人と主人の法的関係

今日は「原典」回帰の『THE RISE AND FALL OF VICTORIAN SERVANT』の第七章、主人と使用人の関係箇所を読んでいます。結構哀しい話というのか、現代の虐待事件のような、メイドさんへの虐待事件、それに対する法的保護、しかし機能しない実態など、同人誌に載せるには暗い話が盛りだくさんなので、別途、整理してホームページの方に書こうかと思います。



メイドさん保護法?については、もう少し、調べてみようかと思います。今までに使用人関連で出てきた法は「主人と使用人の契約関係・主に紹介状関連」と、「男性使用人への課税」、「20世紀のメイドさんへの社会保険」ぐらいでしたが、「The Apprentices and Servants Act of 1851」という法もあるそうです。



・「18歳以下の使用人には十分な衣食住を提供する。守らないと懲役三年」

・「16歳以下のワークハウスから使用人として雇った子供は、年に2回、公的機関か救貧委員の訪問を受ける」



基本的な背景として、ワークハウスや孤児院出身の少女たちは、若いうちに使用人として働きに出されます。こうしたメイドさんたちは家族という保護者がおらず、社会的にも弱い立場なので、主人たちの権力は絶大でした。嫌なことがあればすぐに辞める、そういうメイドさんが多いのは、現代の若年離職と似ていますが、彼女たちはそうしたことも出来ず(知らず?)、主人たちによる虐待に対して無力でした。



その結果、数件の虐待による殺人事件が発生し、上記の「The Apprentices and Servants Act of 1851」が成立?するわけですが、実態は現代の「虐待による殺人事件」が絶えないのと同様、適正に運用されない、事実を隠した場合の強制調査が行えるかなどの問題もあり、この後にも殺人事件は起こっている、とのことです。



こうした事件は目立ちますが、それはその特殊性ゆえで、すべてのメイドさんがそうした酷薄な雇い主に出会ったわけではない、というのは、ご理解いただけるとは思います。直後に筆者は「11歳から働いて、80年間、同じ家族に仕えたメイドさん」のエピソードを記していますし、記録に残って現代に伝わるものだけが当時のすべてではないです。



と、いう感じで、今日の日記は読書の整理となりました。こうした暗い話は、多分、次の章にも出てくるので、それを読み終わってから整理して、原稿として成立しそうならば同人誌の方に掲載します。