ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

P.G.WODEHOUSE推薦の資料本と英国王室に使えた執事の本

久しぶりに資料「運」が巡ってきました。



最近買った『What the Butler Saw』は『ジーブス』の筆者であるP.G.WODEHOUSEが「書棚に絶対置いておきたい」と推薦文を書いた本でした。若干冗長な感じで、18世紀のエピソードが多く、まだ19世紀に辿り着いていないのですが、なかなかよさそうです。



さらに、以前から存在を知っていたもののどうしても入手できなかった本が三冊ありましたが、値段がかなり高かったので買い控えていました。しかし、そのうち二冊が最近そこそこ安く売りに出ているのを知り、即座に申し込み、一冊が届きました。



今まで取り上げた最高の執事Edwin Leeはアスター家に仕えましたが、今回入手した本の筆者Ernest Kingは「エリザベス王女」など王室に仕えた執事です。執事として考えられる限り、最高峰のキャリアです。



彼の著書『THE GREEN BAIZE DOOR』は、これまでに何度も英書の参考文献の中で取り上げられていましたが、入手が叶わずにいた本なので、大変嬉しいです。(今の同書の値段はアメリカだと25,000円、英国では5,000円ぐらい。久我が買ったときはもうちょっと安かったです。英書を古本で買う場合、必ず英米AMAZONを見るべきです。時々、極端に値段が違うことがありますので)




『司教の屋敷のホールボーイになったErnest Kingは、すぐに彼の真の「君主/主人」が執事であると気づいた。



「私が最初に使用人であることを学んだのは、他の使用人たちの使用人になって仕えることからでした。使用人ホールのテーブルを準備し、スタッフの食器を磨き、スタッフの食事を私が並べました。執事のパントリーでは、ほとんどの時間、私は洗い物に従事していました」



その結果、両手はひどく荒れて、冬の間は肘のところまで真っ赤になっていました。彼はまた屋敷の窓掃除をしたり、すべてのナイフを磨いたり、家族や執事やゲストのブーツも磨いたりしたのです。



使用人ホールの食事では、上級使用人が姿を見せたとき、静寂が場を支配しました。昼食のメインコースが終わった後、上級使用人だけが退席して、ハウスキーパーの部屋でプディングを食しました。このときになって、ようやく下級使用人は自由に会話できたのです。



「私たち下級使用人は、引かれたチョークの線の上を歩かなければならなかったのです。それに従わなければ、出て行くしかありません」』

『LIFE BELOW STARIS in the 20 Century』 P.10より翻訳引用



『MAID HACKS』では使わなかったエピソードのひとつです。この引用箇所の原典が『THE GREEN BAIZE DOOR』でした。まさか、この「少年」が英国王室に仕えるとは……



『What the Butler Saw』が1962年、『THE GREEN BAIZE DOOR』が1963年と、またしても古い本が蓄積されていきますが、これで資料本に関しては、隙が無くなりつつあります。