ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

『Under the Rose』後の世界の作品・『Honey Rose』完結

気づいたら、ページをめくり終えていた

配信されたコミックス、先ほど、読み終わりました。



感想はただ一言、「気づいたら終わっていた」。ここまで周囲に目が向かず、ただひたすらページをめくったのは久しぶりです。読み終わった後の余韻も非常に深く、この感覚を誰かに伝えたくて、日記を書きました。



冒頭から、前回のクライマックスの続きが始まります。そこでの展開の早さに驚きつつも、そこから二転三転する物語。「謎」がどうのこうのと余計なことを考える時間は一切なく、一気にラストまで行きました。



Honey Rose』の物語でストーリーをメインで動かすのはライナスですが、それが故に、『Under the Rose』の1巻は主人公だったのかなぁと。



そして『Under the Rose』謎の核心であるウィリアムとフィオナとの関係性、複雑に絡まって見える「真相」の先にある、人々の感情。人間描写、貴族と屋敷と使用人と言う限定された「密室」の世界は、完璧に構築されています。



比類なき世界を、数年前に構築されていたんですね。その世界を、こうして知ることが出来て、嬉しいです。言葉で感想を語るよりも、もう一度読み直したい。何度でも、読み直せます。



Under the Rose』の子供たちが、どのようなプロセスを経て『Honey Rose』の大人になったのか?



Honey Rose』を読んだ人からすれば、『Under the Rose』に登場した子供たちの過去に驚愕したことでしょう。しかし、月刊ベースであれを読んでいては、「まだ次は出ないのか!」と、ファンは「次の話」に渇いてしまっていたかもしれず。



フィオナとウィリアムのエピソードが、いちばん好きでした。あの肌感覚での描写は、心に響きます。劇的なところは苛烈なまでに劇的なのですが、ほっとさせるところの描写も徹底していて、もう翻弄されっぱなしです。



と、この感想を書いていて読み直そうとして周囲を見渡して本を探してしまってから、「あぁ、そうか、デジタルなのか」と。紙が好きな人間としては、単行本化を待ち望みます。




最高級の「ヴィクトリア朝」作品

本当に思うのですが、このクオリティならばBBCなど海外でドラマ化したらより多くの人にふれることが出来るのではないでしょうか? ローズのエピソード、貴族の価値観の描写含めて、日本ではあまり見てこなかった高いレベルのドラマ性で、キャラクターの描写、フィオナの可愛さも群を抜いています。



とはいえ、船戸先生の描かれたキャラクター、世界、構図だからこそ、ここまで読者を魅了するのでしょう。繰り返しとなりますが、この作品の「存在が伝説」として語られていた、これまで読めなかったことは、ただ残念なことです。



しかし、ウェブにおいて読めることは幸せなことであり、とにかく、この日記に接した方は、騙されたと思って「1〜3話」から始めてみてください。



久我の中では、これまで接してきた映画・映像・小説含めて、「最も美しく、完成度が高い、ヴィクトリア朝を描いたストーリー・作品」となりました。同人活動を始めてから出会った、このジャンルにおける「至上の世界」です。



ただ、『Under the Rose』を含めての感想でもあります。相互に補完しあえるこの作品の魅力は、言いがたいです。




二者択一、一生に一度の「選択」

まだどちらの作品を未読の方は、ウェブで『Honey Rose』を先に読むか、『Under the Rose』を先に読むか、ご自分でお決め下さい。



どちらを先に読むかで、作品の感想、受け止め方はまったく違います。片方を選べば、もうひとつの楽しみ方は永遠に失われてしまうでしょう。



久我は『Under the Rose』しか選べませんでしたが、『Honey Rose』を選べる今、その選択肢があることは面白い出来事ではないかと、思うのです。



謎に翻弄されたいならば、『Under the Rose』が先の方がいいかなぁと思いますが、それは自分が『Under the Rose』を先に読んでいるだけなので、フラットな意見ではありません。ただ、もう一度読みなすとしても、『Under the Rose』を先に選ぶと思います。



船戸明里先生の作品が、より多くの人に読まれることを、ただ願います。



Under the Rose (1) 冬の物語 バースコミックスデラックス

Under the Rose (1) 冬の物語 バースコミックスデラックス




2009/05/24注:「まだ読まない」のも選択肢の一つです

読むことによって、現在連載中の『Under the Rose』の楽しみ方も変わります。なので、「まだ読まない」ことも、選択肢の一つとしてご検討下さい。久我はもう、それを選べません。


関連するサイト

[はにろ][あんだろ](船戸先生のブログ内での配信告知)

『Honey Rose』公式サイト



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