ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

企画展「アーツ・アンド・クラフツ〈イギリス・アメリカ〉展」に行く

出発前

企画展「アーツ・アンド・クラフツ〈イギリス・アメリカ〉展」



現在、午前7時半。今日は『UK-JAPAN2008』でチケット貰った展示を見に、埼玉県立近代美術館に行ってきます。美術館巡りでは最近『ジョン・エヴァレット・ミレイ展』にも行ってきましたが、その辺の感想もまとめて書くつもりです。


埼玉県北浦和

初めて行く場所ですが、すぐにわかりました。北浦和駅を出てから公園を通り抜けると美術館です。







会場は2階です。開幕時間すぐに入場したのであんまり人はいませんでした。客層の比率では年配の女性が多かったですね。最初に壁紙やプリントした布地、そして椅子や机と言った工芸品が並んでいます。



個人的にウィリアム・モリスのデザインがどれだけ素晴らしいのかは、わかりません。相対的なものかもしれませんが、当時において「本物」を作ろうとさせただけの「俗悪な商業主義的なもの」をあまり見ていないからです。



確かに美しさは感じますが、実際に生活の中に溶け込ませるべき作品群でもあるので、それが実際の建物、屋敷の中でどのように見えるのだろうかと、思わずにいられませんでした。色彩も、百年を経過すると、当時とは違うかもしれません。



タペストリやプリントした布地はどうやって作っているのだろうか、洗う時大変じゃないのかと余計なことに興味を持ちましたし、個人的に気に入ったのは「ベルベットの布地の見本帳」です。モリスが商会にて、工芸品を芸術品ではなく、生活で使われるものとして扱っていたのかなと、これに触れて、実際に買っていた人がいたのかなと。



椅子も同様です。木製の椅子も幾つかは座ることが出来ましたが、実際にこれを使って暮らしていた誰かがいたのかと思うと、百年以上の時を経て、こんな遠い日本で展示されるなんて、当時の人々は思わなかったことでしょう。



自分が今作ったものが、百年後に、どう扱われているのか?



その点では彼らが志した思想だけではなく、実際にその想いを乗せた作品と向き合うのは、面白い体験でした。中には「低すぎる肘置き」の椅子があったり(実用品?)、展示品の照明が天井にあって最初は気づかなかったり……



銀器もありました。執事が磨いた本物の銀器ですが、今回展示されていたものは執事が磨いたものではないでしょう。若干、輝きが足りませんでした。取っ手の付いたタンスもありましたが、こうした取っ手は東西共通なのでしょうか?



『ベンソンの電灯器具カタログ』なるカタログも展示されていました。当時のカタログ、もっと見たい、欲しいなぁと思いました。



個人的な収穫は「モリスが生きていた時代の息吹」を感じられたことです。お店の写真もありました。当時において、行動し、ソリューションを提供し、商業の世界に入っていったモリスを、これまでよりも知ることが出来ました。



綺麗な模様のものは本当に綺麗ですし、生活の中にあったらいいなと思いますが、まずそれにふさわしい部屋を確保するのは至難の業です……


常設展示に入場:200円

1階のミュージアムショップの奥に、常設展示の美術展をやっていました。ここが思いのほか有名な画家の作品があり、びっくりしました。ドラクロワピカソの絵画があるなど、予想外でした。



『ルエルの眺め』 Claude Monet

『二つの花束』  Marc Chagall



この2枚が、個人的には好きでした。日本の美術館のほとんどはガラスを展示品にはめ込むので、光が反射し、ちょっと距離をとって絵全体を様々な角度で眺められないのが残念です。椅子に座ってゆっくり眺めるのが好きなのですが、今日の角度では駄目でした。



とはいえ、そこそこ子供の参観者もいて、街の中央部の公園と言う好立地もあって、美術に親しみやすい環境なんだなぁと思いました。表に出ると秋晴れの空が広がっていて、もう少し紅葉が目立つようになってから来ると、いいのかもしれません。



屋外展示場もありましたが、自然の方を見てしまいました。個人的に、人間の管理する田園的なものである森林と青空が好きなんでしょうね。