ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

欲しい情報を発見・農村と密接な繋がり(12:00)

自分の書いた原稿を読み直していても、一定のところまでは書けていました。「どこで挫折したんだっけ」と考えていくと、原因を思い出しました。



「スチュワードと農村」「農村と貴族」「土地所有者と農場経営者」という、一種、使用人の仕事から外れるところへの言及が増えている箇所でした。



スチュワードを書いていたら農村を知らなければならなくなった(2008/05/31)

今日はスチュワードの日(2008/06/01)



過去にこのように日記を書きましたが、正しくその通りで、ヴィクトリア朝の農地に関する資料を読む大変さがあって、後に回したのでした。というところで、「そういえば、たまたま買った資料で農場の話あったよなぁ」と思い起こして一冊の資料本を読み直すと、宝の山でした。



これまで、ほとんどの使用人の資料本(満足できたのは2冊のみ)を読んでも足りなかった「領地管理者としてのランド・スチュワード」の職務が、適切に描かれていました。また農地経営を自分で行うのか、貸して地代を取るのがいいのか、という観点でも、具体的な数字と実例が紹介されていたので、必要な情報が得られそうです。



会社で働いていると、特に自分が非生産部門(直接売上に寄与せず、売上を上げる人たちを支援するスタッフ系)に所属していると、どうしても「どうやって収益を上げているのか」が気になります。これらの疑問への回答が得られて、満足です。



ついでに「なぜ貴族が没落していったか」という観点も土地とは切り離せません。こうした概要を「適当に知っている範囲」ではなく、具体的な数字で理解できるので、ありがたいです。さらには、「優秀で有名なランド・スチュワード」の紹介もあり、感謝したい気分です。



久我は、多分、運がいいです。最高の資料に恵まれています。今回参考にしている本との出会いも偶然以外の何物でもなく、内容を見て買ったのではなく、タイトルと著者を見て買ったものでした。また今現在、「売上」ではなく、「利益」を意識する部署に所属している分、「その事業は持続可能なのか」という観点も意識が強くなり、こうした過去の情報も自分にとっては新鮮なものとなります。



いい資料が作れそうです、というか、作ります。



資料というと、最近、総集編に間に合わなかった英国ナニーの資料本を読んでいますが、この本が他の資料であまり取り上げられていないことに気づきました。初めて見る情報が多いのです。使用人の中の一部として扱われる場合と、一冊で丸々扱われる場合で情報量の差がありますが、筆者の主観に問題があるのでしょうか?



かなり実例を挙げて論証されているようなのですが、支持されていない、メジャーではない、その上、久我もテキストとして好きになれない点で、どこまで信じていいのか、わかりません。



いろんな資料本に接していると好き嫌いも出てきますが、読者の方にはそういうこともある、つまり久我が選ぶ資料は久我の好みに合致している、久我の伝えたい文体に合うものが選ばれていることはご承知おきください。嘘は書いていませんが、情報は取捨選択されています。



さすがにすべては伝え切れませんし、そこが、資料本編集と言う点における個性なのではないかと思います。誰が書いても同じものならば、「自分が」書く意味がありません。誰かがやればいいと思います。



『エマ ヴィクトリアンガイド』があって、『図解メイド』があって、『ヴィクトリアン・サーヴァント』があっても、同人誌を出し続けられるのは、自分が欲しい情報が無いことも多く、自分が伝えたいことは自分にしか出来ない、とも思うからです。



スチュワードの解説は、そうした想いを伝える最善の答えになるでしょう。