ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

船戸明里先生・作品を作者が守る時代

船戸明里先生のブログにて、自身の作品がネットで語られることについて、言及されています。



Wikiぺディあとあらすじ



以下は、上記ブログを読んだ上でお読み下さい。








以下、当ブログで言いたいこと(自分の感想)です

・作者が、自分の作品と読者との「出会い」を守る時代に思える。

・その為に、情報を公式で出していく、見えやすい場所に置く。

・出会いの機会自体を読者が増やすことを否定するものではない。

・船戸先生の試みは興味深く、支持したい。

・「反響」で判断される前に、まず「本物」に接して欲しい。

・自分も、「感想」と「あらすじ」と「ネタバレ」は意識したい。









































個人的に久我は、作品の性質によって「あらすじ」(冒頭だけではなく、ストーリーそのもの)と「感想」を明確に分けています。『Under the Rose』は船戸先生が書かれるように、情報によって作品への印象が左右されます。翻弄されまくっています。下手に未読の人が触れてしまうと、作品の面白さを永遠に奪います。その為、なるべく「感想」を書きます。



一方、作品の背景世界や描写の意味を深めて読みたいときは、「ネタバレ」という形で明示し、メイドや屋敷などを関連させて、書いていますし(『エマ』ですね)、「参入障壁が非常に高いであろうもの(興味を持ってもすぐに体験できないもの)」は、ネタバレを断った上で、紹介しています。



読書感想文と一緒で、あらすじだけでは「情報」であって、面白くない、作品を読む楽しみを奪う、感想だからこそ書く意味があると思います。それは、同じ作品を好きな方を意識していますし、万が一、筆者の方が見ていたら、「こう受け止めたよ」という、ファンレターのようなものにもなります。



梅田望夫さんは自著の感想を数万のブログから読み取ったと言いますが、今はそのようにある程度、筆者に「情報をフィードバックできる」時代だと思います。



話がそれましたが、船戸先生の言及で面白いと思ったのは、「wikipediaは作品を知らない人が訪れる場所」「個人サイトとは規模が違う」と言う視点です。



ネットの時代において、作品の価値を伝えるのはとても大変ですし、自分が意図しない形で作品や言葉が曲解されることは多いです。久我の感想も、そもそも見当違いで、ノイズかもしれませんが、『Under the Rose』の感想を読みに来る方もいます。



自分レベルで恐縮ですが、時々ニュースサイトに日記が取り上げられることがあります。しかし、「意図しない形」「相手が言いたい言葉」で括られ、自分が伝えたいことが抜け落ちていることもあります。



同じ事実を見ても、違う解釈が成り立つ、だからこそ人間は面白いのですが、それが作品の正しさを奪うとなれば、話は別です。船戸先生は自分の作品を、「未知だからこそ楽しめる最高の喜び」を「これから出会う読者の為に、『情報』から読者を守ろうとしている」ように思えます。



公式サイトでの『Under the Rose』のあらすじを用意したり、1巻の立ち読みを出来るようにしたり、「初心者に読んで欲しい情報」も用意しています。



「反響」だけで判断せず、「音源である本物に目を向ける」、作品で得られるものは、作品に接して、自分で得て欲しい、その機会は用意しているよ、と。(自分のこの感想自体が「反響」でしかありません)



もちろん、読者にも「どこで情報に接するかの自由」はあります。



昔、マルセル・プルーストの長編『うしなわれたときを求めて』を読みましたが、正直、長さに辟易しました。挫折しかけましたが、「読み終える」ことを目的に頑張りました。読み終えてからしばらくして、短くまとめた抄訳版が出ました。楽しそうでした。結局買いませんでしたが、「あれは、本来の楽しみを奪うのか、楽しみきれない人に光明を与えるのか」と考えたことがあります。



しかし、今回の話は、それと違います。様々に情報が錯綜する中、「作品の面白さを損ねる可能性が高い情報に遭遇する」可能性もあります。意図せずに接して、最高の楽しみを失うのは、避けたいものです。



交通事故のようなものです。



だからこそ、船戸先生は声を上げているのだと思います。読者から、「未読」の楽しみを守るために。「未読」こそが、一度しか味わえず、読んでしまえば戻ることの出来ない楽しみ方、ですから。



久我も、時々は未読の作品のあらすじサイトを使います。「自分の人生を考えて、この作品をすべて読む時間は無い。しかし、あらすじは知りたい」と言う時です。



例えて言えば、「『機動戦士Zガンダム』をいまさら全話見る時間はないが、概要を見返したいので劇場版ぐらい(劇場版は見ていないです。時間の話)にまとめられていると嬉しい」という横着なものであったり、「このゲームをやる時間は無いけど、キャラクターは面白そうだから知りたい」時などです。



それが作品の楽しさを損なうことは承知していますが、「知りたい」作品に出会ってしまうのも、簡単に「消費」してしまうのも、ウェブだからこそでしょうか。(作品を楽しむ時間が何故無いのかを考えないといけませんが)



そうした意味で、「あらすじサイト(概要・ネタバレすべてがわかる)」ではなく、「公式の体験版」などを用意し、「短時間で本物を経験させる」試みは、作品との出会いを繋がりへ転化する点で大切になってくるのかもしれません。



Under the Rose』は1巻の立ち読みも用意しています、とまで言われれば、公式の情報に接しない理由は無いと思います。



その一方、「自分以外の人はどう読んでいるのかな?」「読み落としは無いかな? 知らない楽しみ方は無いかな?」と、「他者の視点と言う光で照らされた作品の姿(=感想)」を探すことも、作品を深く知る意味で、必要だと思います。



もっと論理的な人が適切にまとめてくれることを願いつつ。



書くのにエネルギー必要です……