ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

お知らせ〜『英国メイドの世界』増刷による在庫補充と、水樹奈々さんのラジオ番組出演予定

【お知らせ・その1】『英国メイドの世界』在庫補充

『英国メイドの世界』、ようやくAmazon在庫が復活しました。在庫数はこれから増えるのではないかと思います。



※2011/10/04追記:また尽きました……補充はすぐおこなわれるのではないかと。



楽天bk1には在庫があります。書店の方が確実な可能性もあるので、ご留意ください。


【お知らせ・その2】水樹奈々さんのラジオに出ます

10/09 00:30-01:00放送のTOKYO FM水樹奈々のMの世界』にゲスト出演しました。10分ぐらいの予定で、メイドについて語ってきました。『Mの世界』と『Maidの世界』繋がりにて。



http://www.tfm.co.jp/7/index.html



立場的には、歴史的なメイドに興味を持つ水樹さんへ解説を行うというものです。



話すプロではないことや限られた時間内で説明する難しさもあって、伝えたいことが断片化しているかもしれませんし、論理的ではないかもしれませんが、私を知っている方よりも、水樹さんを通じてメイドを知るリスナーの方向けの番組となっています。



私が理由での放送事故?放送のクオリティ?に問題が無ければ、放送されるはずです。水樹奈々さんはとてもお話ししやすく、素敵な方でした。人生、何があるか分からないものです。そして、初のメディア露出です。以上、お知らせでした。


講談社BOX刊行『英国メイドの世界』増刷・第四版&現在発売中

英国メイドの世界

英国メイドの世界





『英国メイドの世界』、2011/09/26付で第四版が出て、三度目の増刷となりました。2011年01月から9か月が経過しましたが、返本ラッシュも乗り越えて在庫が尽きる見込みの下での増刷でした。

このような機会に恵まれましたこと、感謝いたします。これまでにお会いした読者の方々に加えて、出版社の営業の方や、実際に店舗でフェアに混ぜていただいたり、面に入れていただいたりと書店の皆様のご協力があってのことです。ありがとうございます!



とはいえ、毎回書いていますが、まだまだ本書の認知は低く、「英国メイドをピンポイントで楽しめる」方々にも届いていない、最近になって気づかれるという事例を見受けています。本書を楽しんで下さる読者の方たちと今後もお会いできるよう、引き続き、活動を続けます。



基本的にAMAZONへの在庫補充を出版社の方に優先していただいていますが、まだ在庫の状況が反映されてはいないようです。数日中に反映されるのではないかと思います。書店からの注文も受け付け可能なはずなので、よろしくお願いいたします。



『英国メイドの世界』発売8か月経過報告と電子書籍のアクションなどと、定期的に振り返ってはいますが、今回はお知らせのみでした。もうすぐ1年が経ちますね。


秋の新番組に執事と家政婦

余談ですが、フジテレビでドラマ化した謎解きはディナーのあとで(2011/10/18 火・21時)に執事が出たり、家政婦のミタ(2011/10/12 水・22時)で「家政婦」が出るように、家事にまつわる職種への注目は高まっているようです。



実際、今はメイドブームと数年のタイムラグがありましたが、執事ブームのピークに近いと思うんですよね。ちょっとまだ調べきれていませんが、こういうトレンドで間口が広がり、興味を持ってくれる方たちが増えると嬉しいですね。



あと、『ダウントン・アビー』放送も近づいています。ダウントン・アビー 〜貴族とメイドと相続人〜 #1と、各話の紹介も出ています。日本版のサブタイトルは、『マナーハウス 貴族とメイドの90日』を踏襲していますね。


新宿・ジュンク堂でウッドハウスのフェアに陳列中(らしく)&AMAZONでは在庫切れ中





このようなつぶやきを拝見し、今週末に様子を見てこようかと思います。何度も何度も書いていますが、『英国メイドの世界』は日本最高レベルの英国執事の情報量を記載した書籍で、執事関連書籍と非常に相性がいいです。以前には、この秋にドラマ化する『謎解きはディナーのあとで』の著者の方のフェアの際に、一緒に並べてもらったと聞き及んでいます。



その一方、アマゾンの在庫が回復しないまま、注文できない状況が続いています。状況の確認を出版社にしておりますんで、今しばらくお待ちください。この秋にかけて、『英国メイドの世界』の執事(+フットマンや男性使用人)側面がしっかりと世の中に届くならば、まだまだ読者の方には出会えると思っています。



最近でも、メイドが好きながらも「今」、私の本を知った方々に出会いました。また、こちらのブログの感想久我真樹:英国メイドの世界(講談社) - ただの日記。それ以上でもそれ以下でもない。では、使用人にそれほど興味がないと言われる方でも、貴族を接点に本を楽しんでいただけたようでした。



伝えることを、見つけてもらうことを惜しまなければ、というところでの努力はまだまだ楽しんでいきたいと思います。


『英国メイドの世界』AMAZON在庫切れと「執事」も扱ってますよ情報

久々にAMAZONでの『英国メイドの世界』在庫が尽きました。注文受付は可能です。これは返本などで本が出版社に戻ってくると補充されますので、実際には2〜4週間待ちより短い場合があります。



今のところ、『英国メイドの世界』の在庫は、bk1での通販と、ジュンク堂丸善の実店舗、紀伊國屋は通販と店舗にあるようです。ちなみにコミケのサークルスペースでは「商業資本」で作られたこの本を頒布できません。コミティアには持ち込めますので、08/28(日)には手元の在庫を数冊持っていく予定です。



AMAZONでの注文受付可能な「データ上の在庫」と、画面に表示される「在庫数」は差があり、たとえば現在はAMAZONへ実在庫を優先的に送るように出版社に依頼しており、都度都度、出版社へ返本があるとAMAZONへ在庫が送られて在庫数が増える運用となっています。



あとは増刷が行われた場合に回復しますが、仮に自分が意思決定を行える立場でも、なかなか出版後の増刷判断は難しそうですね。私は出版社の部数決定経験がないので同人時代の経験でしかありませんが、読者の方に読んで欲しいと完売しても利益が出ない印刷部数で刷ったこともあります。



多分、『英国メイドの世界』は数年単位で売れていくとは思いますが、在庫管理や費用の問題もあります。出版社は利益を出すところなので、何か目に見える形で山が無いと、返本都度の在庫補充の状況は変わらないのではないかと思います。専門家でもなく、情報を正確に持っているわけではない私の考え、との留保付きですが。



いずれにせよ、半年以上が経過する中で、今も新しく興味を持って下さる読者の方々にお会いできて、感謝しております。ありがとうございます! 本当に、今になって出版を知る方もいらっしゃいます。


また、『英国メイドの世界』というタイトルで「メイドジャンル」に突き刺さったものの、「執事・男性使用人」も扱っていることがなかなか伝わらない、という事象も確認しています。



世の中に伝わる「メイド・イメージ」の強さと、執事軸の伝え方(2011/02/16)



世に問いかけて、その反響を見て、伝え方を修正していく、という形ではありますが、この辺の男性使用人も扱っているとの伝え方は、別の機会に行います。


同人版『英国メイドの世界』の巻頭カラー4ページイラスト・一部公開中

2008年の同人版『英国メイドの世界』で巻頭カラー4ページのイラストを描いて下さった神奈江淳さんが、同イラストの一部をTINAMIで公開されています。是非ご覧ください!



http://www.tinami.com/search/list?prof_id=26527



この連作では「夜」と「光」が描かれています。電気を使わず、蝋燭やランプといった炎、そして月の光で照らされた世界は、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』的雰囲気にあふれています。明かりで照らされる世界が生まれると同時に、闇・影も生まれます。その陰影の描写にこだわって描かれた作品でもありますので、「ヴィクトリア朝的な夜・蝋燭・ランプの赤い炎・青白い月の光」を、鑑賞していただければと思います。



人気があるという、「若者・おっさん・犬」の組み合わせ連作・夜の風景2はこちらにて。



『英国メイドの世界』発売8か月経過報告と電子書籍のアクションなど

久しぶりの経過報告となります。『英国メイドの世界』は2010/11/11の発売から、先日の2011/07/11で遂に8か月を経過(9か月目に突入・もうすぐ10か月へ……)しました。発売から半年で返本期間を迎えると、基本的に本は在庫となって出版社に戻ってきます。半年が経過しても尚、書店の棚に残り続けられる本は、わずかです。



半年が経過した5月に書いた『英国メイドの世界』刊行から半年経過と振り返り(2011/05/13)時点では「これから、返本ラッシュが始まる」と書きましたので、その辺りの続きとなります。



そうは言いつつ、自分で出来ることはしようと、書店の方に「この本は残せる」「他の本との併売ができる」との見込みを持ってもらおうとしたり、様々な角度で伝えて本の売り上げをなんとか伸ばせないかと努力したりしました。そうした様々なアクションの振り返りもします。



結論を最初に書くと、初期のインパクト以降、それに匹敵する山や話題性は、個人の努力で作れませんでした。本自体の販売数はお陰様で、「この手の本(歴史資料・2800円)にしては、かなり売れた方」となりますので、私がアクションしたこと自体に意味はありましたし、多くの方に出会えました。アクションを何もしなければ「3版」という2回増刷の結果は出なかったでしょう。



なので、この8か月で出来なかったのは、「この手の本」という但し書きをとるに至らなかった、この点です。選択と集中をし切れなかったというのもありますし、メディア露出も一切聞き及んでいません。取り上げてもらえる存在として認知されなかったようですね。多くの人を巻き込める、興味を持ってもらえるような伝え方をできませんでした、というのが現状です。



このテキストの最後に、今後の話として、『英国メイドの世界』電子書籍化に向けた話(具体的には何も進んでいません)や自分の気持ちを書いています。



何はともあれ、自分で「自分の本を殺す」(忘れる・諦める)ことだけはしないように、これからも魅力を伝え、語りかけ、大切に育てていくことは続けます。


目次

  • 1.書店からの返本は始まっている
    • 1-1.シリーズの強みを得られなかった
    • 1-2.歴史本としての認知は得られている
  • 2.著者によるネットでのアクション・提案は中途半端に
    • 2-1.著者によるコンテクスト作り
    • 2-2.感想の共有
    • 2-3.Facebookの活用
    • 2-4.異なる接点での伝え方
    • 2-5.『英国メイドの世界』第一章PDF・見本誌の効果について
  • 3.電子書籍化を相談中・自分でできるものは自分で進める
  • 4.終わりに


1.書店からの返本は始まっている

結論から言えば、2か月経過した時点で一定数の返本が行われています。実際の印刷部数や返本率は公開しませんが、幸いなことに新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる(Garbagenews.com)に記載されている約40%という数字は大きく下回っています。それでも、もう一度、増刷がかかるような残り部数ではありません。



元々、『英国メイドの世界』は初期に幅広い書店へ行き届かせる配本を行ったので、一冊だけ書店に送り込まれるようなこともありました。こうした書店からの返本が多数を占めるのか確認をしていませんが、個人的には文脈を作りにくい状況に配置されると(たとえば歴史ジャンルや、シャーロック・ホームズ『エマ』の近くのようなコンテンツのテーマが近い領域)、売りにくかったと思います。



また、一過性のネタとして仕入れてもらえたかもしれないコミック系やオタク系のショップで「定常的な在庫」として置かれているのかも不明です。私がふらっと訪問した『とらのあな秋葉原店では、見当たりませんでした。平積みで売って下さったメロンブックス秋葉原店でも、その後、「どのコーナーに配置されているか」を追跡していません。



観察の結果ですが、ベストセラーでもない限り、書店に残る確率が高まるのは、下記2点の要素だと思います。


1-1.シリーズの強みを得られなかった

本は、「自分が所属できる場所」があると、書店に残りやすいです。『英国メイドの世界』の後に刊行された『図説 英国メイドの日常』の書店での扱われ方を見て確認できたことですが、「図説シリーズ」として近所の書店にも入っています。



「シリーズ」に所属していない、カテゴリーエラー的な『英国メイドの世界』は、時間がかなり経過してからの書店での生存率が低いのではないでしょうか。



同ジャンルの『図解メイド』も新紀元社の「図解シリーズ」に入り、見かける機会は多いです。シリーズに所属する本は書店での配置面が分かりやすく、そのうちの一冊として残りやすくなるはずです(書店での観察や、後者の場合は図書館への入庫を含めて)。



一応、『英国メイドの世界』は「講談社BOXピース」のカテゴリに所属していますが、同シリーズだけを集めた書店をほとんど見たことがありませんし、「ピース」の中でも異質な本である現状、集合してレーベルの力を借りるに至っていません。



本が一番売れる宣伝手段は「新刊を出し続けること」だと思いますので、仮に、自分でもう一冊、類書を刊行できれば「自分でジャンル・シリーズを形成する」ことも可能ですが、そうそう機会があるものではありませんし、誰もが選びえるものではありません。


1-2.歴史本としての認知は得られている

とはいえ、嬉しい出来事も体験しました。ベンチマークとしていくつかの大書店を見る中、紀伊国屋書店新宿本店と新宿南店、それにジュンク堂新宿店で、ようやく「歴史コーナー」に配備されました。紀伊国屋書店では『図説 英国メイドの日常』と並んで平積み、ジュンク堂新宿店でも平積み的な置き方になっていました。



紀伊国屋書店は好きなのでこまめに足を運ぶ場所です。私の観察という但し書き付ですが、販売後は『英国メイドの世界』は新宿南店にしかありませんでした。在庫が尽きてから補充されませんでしたが、その後、新宿本店の講談社BOXコーナーと、マンガ・ゲーム攻略本のエリアに配置されました。



しかし、最近になって紀伊国屋書店新宿本店と新宿南店の歴史コーナーに配備された次第です。ジュンク堂新宿店の場合は、「マンガ技法」というコーナーに配備されていましたが、こちらも歴史コーナーと、大きめの書店で配置され始めていたのは希望を感じました。


2.著者によるネットでのアクション・提案は中途半端に

ネットでのアクションはいろいろとやってきましたが、五月雨式になってしまいました。振り返り、という趣旨に照らし合わせて、自分のアクションを見てみましょう。



難しいのは、完全に効果を把握しきれない点です。ネットで存在を知って本を買ったのか、他のサイトで本を買ったのか。担当編集の方より流通面(リアル書店やネット書店等のどこに渡ったか)の比率概要をいただき、その数字や自分個人のAMAZONアフィリエイトIDを見る限りはネットでのアクションに意味はあったと思います。



しかしそれでもなお、書店の偉大さを再認識したところも大きいです。



前置きが長くなりましたが、以下、アクションです。


2-1.著者によるコンテクスト作り

出版状況の振り返りを行い、まだ私の本を知らない人に出会うため、ネットで情報を発信し続けよう、その方たちの目に入るような伝え方を考えようと、いろいろとコラムにもしてきました。



第1回目:出版した本に1日でも長く生きてもらうため、著者に出来ること(2011/01/16)

第2回目:本を書店で初めて売る体験から気づいたこと(2011/01/26)



そして、第3回目として書店で本を売る現状認識と著者が提案可能なアクション(2011/02/07)を書き、具体策として書店・店員様向けの案内を告知するカテゴリを、サイトに新設(2011/02/16)と行動し、自分の本(『英国メイドの世界』)と重なりを持ち得る本の紹介を行い、コンテクストを共有しようと結論付けました。



ところが、他の作業や同人活動の準備で忙しく、更新が止まっています。いろいろと面白いコンテクストは存在しているのですが、自分の処理能力が追い付かない状況で、更新の優先順位を下げています。


2-2.感想の共有

『英国メイドの世界』を読んでいるのはどんな人なのだろう、どういう観点でこの本に興味を持ったのだろうと、ネット上での感想をいろいろと読んでいました。梅田望夫さんレベルには到底届きませんが、可能な限り、読もうとしました。



その中で、「他の人がどう読んでいるのか、読者にとっても興味がある」との話をうかがい、ひとまずTwitterの感想を紹介しつつ、自分が補足を行うアクションを行ってみました。



『英国メイドの世界』ネット上での感想のまとめ:その1(2011/05/07)

『英国メイドの世界』ネット上での感想のまとめ:その2(2011/05/15)



ただ、これが意外と大変で、あんまりやりすぎてもどうかなぁと迷いがあり、徹底したアクションに繋がりませんでした。実際に自分のアクションに意味があったのか、というところも可視化できていません。



他にもブログでの感想読書メーターなどでいただいている感想を取り上げたいと思うものの、なかなか出来ていません。


2-3.Facebookの活用

Facebookにファンページを作りました。認知度の問題だと思いますが、あまり見つけてもらえていません。とはいえ、これは自分でも積極的に宣伝していないので、当たり前の帰結です。



Facebook/英国メイドの世界



あと、世の中的にマスメディアで報じられる「萌え」に特化した「メイド」認知を見る限り、この辺りをプッシュするのは難しいのではないかと思われます。


2-4.異なる接点での伝え方

自分が好きなテーマでブログをいろいろと書いて、それぞれが入り口となってこのジャンルに興味を持つ人が増えるといいなぁと思っています。ただ、ブログではあくまでも自分が好きなことを好きなように書き、考えをまとめることの方が多く、特に本に興味を持ってもらえるような内容にしていません。



たとえば、ここ最近、なんとなく考えをまとめるために書いた「2つの使用人問題」を巡る19世紀末時点での女主人の見解(2011/06/26)は、本当に「なんとなく」書いたので、多くのブックマークを集めて閲覧されたので驚きました。そういうレベルなので、そこから著者である私や『英国メイドの世界』に興味を持ってもらう、などという発想はありませんでした。



とはいえ、今回接点を持つことで、また何かがあった時に、思い出してもらえたらありがたいですし、その中に興味を持つ人がいたらいいなぁと思っています。まったく興味がない人に買ってもらえるとまでは思っていませんので、興味を持ち得る人とどう出会えるかは永遠の課題です。


2-5.『英国メイドの世界』第一章PDF・見本誌の効果について

ページ数が多いので事前に中身を知りたいだろうと、担当編集の方にお願いをして『英国メイドの世界』第一章「英国使用人の世界」PDF公開開始(2011/05/30)を行いました。これが五月末なのでだいたい7週間を経過しました。



まず、PDFへのリンクがある[参考資料]英国メイドの世界(著者による紹介)の閲覧数(PV)と、PDFのダウンロード数を見てみます。


年月 PV ダウンロード数
2011/05(02日) 224 70
2011/06(30日) 227 179
2011/07(28日) 165 73



5月が2日でこの数字なのは、TwitterでRTいただいた効果ですが、以降はそれほど集まっていません。ダウンロード数はPVに比して非常に高いですが、これはPDFを台湾系のSNSやダウンロードツールらしきブラウザから直接リンクをされたのが要因のようでした。



いずれにせよ、322ダウンロードに対してどれだけ売れたのか、というのは一切わかりません。PDFの最終ページに、JコミのようにアフィリエイトIDを含んだ商品へのリンクを貼っておけば違ったかもしれませんが、そこまで頭が回りませんでした。



PDF化自体によって、知人に出版の報告をする際、以前よりも伝えやすく、また読まれやすくなったかなぁとは思います。以前は直接会わない限りは、AMAZONのURLをメールで案内するだけでしたが、今はPDFである程度読めるようになっています。また、『英国メイドの世界』を気に入った読者の方が、知人の方に紹介するときに使っていただけているならば、意味はあったと思います。



本当、最初に設計しておかないと難しいです。


3.電子書籍化を相談中・自分でできるものは自分で進める

これは中期的なところで、電子出版領域の発展を見据え、担当編集の方と『英国メイドの世界』の電子書籍化の相談を始めました。まだまだ相談レベルで具体的な進捗はありませんが、私の出版経験として電子書籍を体験したい気持ちがあります。


3-1.『英国メイドの世界』の電子書籍

本を書店で初めて売る体験から気づいたこと(2011/01/26)で書いたように、書店で本を売ることから見えることがありました。同時に、本を売る前から分かっていること(電子書籍化しても、人が通らない「書店の本棚」に並ぶだけで、何もしなければ売れるはずもない)もあります。「売れない」と言われるものがどの程度のレベルなのか、売るには何ができるのかを経験したい気持ちもあって、始めるつもりです。



個人的には『英国メイドの世界』はそのタイトル故に、「メイド本だけ」と思う方々もいます。しかし、実は、執事やフットマン、ガーデナー・ゲームキーパーといった男性使用人の解説が、非常に多く掲載されています。それが伝わっていない実情があり、電子書籍化のタイミングで、こちらを強く打ち出せないかと考えています。



入れ込めなかった索引もなんとかしたいと思っていますが、果たして作業コストが見合うのか、というところも考える次第です。「売れない・赤字」となる見込みのものを出版社にお願いするわけにもいかず、出来るだけ、数字を保証できる材料は揃えたいところです。



今のところ、担当編集の方とやり取りをしていますが、実現可能性は分かりません。ただ、方向性として紙でできることは紙でやれば良くて、紙でリーチ出来ていない読者層にアプローチする方向になるのではないかと。


3-2.同人誌の電子書籍

電子書籍経験を積みたいのは、商業版だけではありません。元々、私は「個人が好きな表現を行い、読者と出会ってやりがいを得て、その上で何かしらの代価を得て、表現に費やす時間を増やしていける・幅を広げられる」環境に興味を持つようになりました。



同人誌即売会で得られる「創作を続けやすい環境」(2010/04/17)や、同人活動の継続性を高める手段としての「利益(2009/09/11)に書きましたように、同人誌即売会への参加を経て、「好きなことで食べられるレベルに行かないまでも、好きな領域の活動を続けられる」ことに肯定的です。



電子書籍元年」と言われた去年よりも遥か前から同人では取り組んでいる方々もいますので、大げさに語るものではありませんし、電子書籍は「コミケ」「コミティア」になりえるのか、というところでは違うと思いますが(ニコニコ動画やpixiv的なコミュニティ・メディアがそれほど見えないので)、「電子書籍」を通じて、今まで出会えなかった読者にどれぐらい出会えるのかに興味があります。



さらに、今度の夏コミで刊行予定の同人誌『英国メイドがいた時代』は、講談社版『英国メイドの世界』で描けなかった、いわば「続き」です。商業化に至らなかったテーマや内容でも、自分で好きなように作れるのが同人誌です。そして、商業版を読んだ方にこの本を届ける機会を広げたい意図もあり(同人だけではなく)、同人誌の電子書籍化に力を入れ始めました。



今のところ、2009年の夏に作った『英国執事の流儀』、2010年夏の『英国メイドにまつわる7つの話と展望』を公開しました。



公開場所のパブーについては、メディア化が進んでいるようで閲覧数自体は集まっています。ただ、販売数は非常に少ないです。値段の影響も大きそうですね。


タイトル 定価 閲覧数 販売数
英国メイドにまつわる7つの話 100 352 3
英国執事の流儀 500 1669 3



一番驚きなのは、自分で宣伝を続けてきた『英国メイドの世界』PDFダウンロードページよりも、閲覧数が大きいことです。



もう少し様子を見て、面を広げていこうと思います。DLSiteでは、『英国メイドにまつわる7つの話』の公開をしていますが、こちらは43ダウンロードと10倍近いです。閲覧数や閲覧機関の相違もありますが、近々、『英国執事の流儀』もDLSiteで公開してみます。


4.終わりに

こうして振り返ってみると、散発的と言うか、効果が見えないことにリソースを使い、また適切な効果検証を行えていないのではないかと思える結果になりました。書店での販売も含めるのでネット上だけで販売の変化を追いきれるものではありませんが、更新し続ける必要があるものは腰を据えて、長期的にやっていかないとダメですね。



とはいえ、逆に、そろそろ自分が「子離れ」してもいい時期かと思いもします。『英国メイドの世界』に捕らわれてしまっている気がしなくもありません。あくまでも出版は「手段」です。それでも、わが子可愛さや、「伝え方を適切に行えれば、もっと多くの読者に出会える」との確信はあるので、うまい距離の取り方を考えたいものです。



また、本を出した時、「小説・物語として本を作らないの?」と以前の職場の社長と同僚1名に言われました。より広範な層に届けていくには、こうした方向に進むことも必要なのではないかと。元々、創作のために作っていた本なので、こちらにも力を入れたいところです。



今回は数字面をテーマにした話でしたが、同人時代には出会えなかった多くの感想や反響に出会えているのも、個人としてはとても大きな体験でした。読者の顔が見え、声を聞けるのは、良い時代だと思います。


新刊『英国メイドがいた時代』

『英国メイドの世界』の続編的位置づけ・「最盛期から衰退の時代へ」

夏の新刊情報です。通巻では18冊目です。



英国メイドがいた時代

今回の新刊は『英国メイドの世界』で主に扱った「19〜20世紀前半までの間に英国社会に広がったメイド雇用」がどのように衰退を迎えて表舞台から消え去ったかを解説する前半と、「家事労働者」へと名を変えた「家事使用人」の仕事が、「1980年代以降に形を変えて復活して現代に繋がる」要素を描く後半とで構成しています。



この両テーマは本来、『英国メイドの世界』に載るはずでしたが、本のバランスを崩さない形で私がまとめられず、掲載を行いませんでした。ある意味、映画を見終わってスタッフロールを見ていたら、次の作品がいつの間にか始まって、見ていた作品の余韻を消してしまう、という形でした。そこで今回、同人誌の形で書き直しと資料の増強を行い、独立した一冊として仕上げました。



これまでに刊行した同人誌シリーズの位置づけとしては、「家事使用人」を扱ってきた『ヴィクトリア朝の暮らし』シリーズ「使用人パート」完結編です。ある意味、同人誌1巻(2001年作成)と今回を比較すると、そのテーマの広がりも全く違っています。



24才から始まった同人活動が、35才になってまったく同じであるわけでもなく、自分も変われば、自分を取り巻く環境も変わるので、テーマへの取り組み方や視点も変化するところをお伝えできればと。



仕様

タイトル:『英国メイドがいた時代 The End of "Upstairs Downstairs"』

副題  :「ヴィクトリア朝の暮らし 完結編」

値段  :1000円

サイズ :A5判

ページ数:148ページ(厚さ0.9cm)

頒布開始:2011/08/14(日) コミックマーケット80 西た08a

委託  :「とらのあな」/「COMIC ZIN」の2ショップ



電子書籍パブー/500円DLSite/525円


制作者情報

筆者     :久我 真樹(サークルSPQR

表紙イラスト :カズノリ様

表紙デザイン :U様


内容/目次

  • まえがき
  • 目次
  • Part.1 英国メイドがいた時代・
    • はじめに
    • 1章. 英国におけるメイド雇用の背景
    • 2章. 2つの「使用人問題」・
    • 3章. 「階下」の時代の終わり
    • 4章. 「階上」の世界の終わり
    • 5章. 使用人という仕事、あるいはメイドオブオールワークの現実
    • 終章. 家事使用人から家事労働者へ・
    • 結びにかえて
  • Appendix 数字で見る英国メイド
    • 1. 家事使用人の労働人口 
    • 2. 家事使用人の年齢構成 
    • 3. 家事使用人の勤務期間 
    • 終わりに 
  • Part.2 メイドがいる時代を生きている、生きていく・
    • はじめに
    • 1章.「新自由主義」と雇用主の変化 
    • 2章.多様化する供給源 
    • 3章.現代家事労働者の職種 
    • 4章.家事労働者を巡る新旧の問題 
    • まとめ、あるいは展望
  • あとがき



まえがき(『英国メイドがいた時代』より転載)

 『英国メイドの世界』を追いかけたらいつの間にか現代に繋がっていた、その驚きを読者の方々と共有したい気持ちから、本テキストは生まれました。家事使用人の世界は「ノスタルジックに語られるもの」「過ぎ去った時代」だと私は研究当初に考えましたが、調べれば調べるほど現代に繋がる道筋が見えました。



 そこで本書では、英国社会全体に広がった使用人雇用の習慣が衰退した背景をテーマとします。使用人がいた時代がなぜ終わったのか、なぜ終わらざるを得なかったのかの整理と考察を行い、英国の家事使用人を扱ったこれまでの同人活動の完結編とします。



 講談社から2010年11月に刊行した『英国メイドの世界』の続きとなる位置づけです。



 結論から言えば、英国ヴィクトリア朝にピークを迎えた家事使用人の労働人口は、19世紀末を経てさらに増大し、第一次世界大戦の影響で一時的に減少したものの、第二次世界大戦直前までにその労働人口は最盛期に匹敵する規模に回復しました。



 しかし、第二次世界大戦を経て一気に激減し、その後、使用人の労働人口は二度と同じ水準に戻りませんでした。労働人口の推移だけを見れば突然死にも見える使用人衰退の原因を考察するのが、『Part.1 英国メイドがいた時代』です。



 『Part.2メイドがいる時代を生きている、生きていく』では、使用人雇用が著しく衰退したはずの英国で、1980年代以降、再び個人の家庭で家事を行う労働者が増大していった事情を取り扱います。住み込みで働く人々こそ減少したものの、21世紀のある調査では英国で家事サービスに従事する労働者数はヴィクトリア朝の規模を超えるものに成長したといわれています。



 掃除や洗濯、料理だけではなく、育児や介護の領域でも家事サービスへの需要は途絶えていません。



 そして英国で終焉したはずの「メイド」の仕事は、今現在、世界中の様々な国々に拡散しています。英国で家事労働がなぜ復活したのか、英国だけではなく世界で広がるメイドの雇用を成立させる条件の答えを、探していきます。



 本来、『ヴィクトリア朝の暮らし』と冠する同人誌シリーズを作り、英国ヴィクトリア朝の生活への関心を軸にした私が、なぜ現代事情にまで強い関心を持ったのか。



 その理由は、「メイド」を軸に、どこまで世の中の事象と接点を持ち得るかを私が試しているからです。現代を生きる以上、自分が扱うテーマが世の中に繋がる同時代性を持ち、今を照らす視点になって欲しいと願っています。

 こうした経緯もあって私はメイドへの関心を広げました。



 「貴族の生活・屋敷」を起点とし、「屋敷の暮らしを支えたメイドや執事」に興味を持ったのが始まりでした。その後、自身の転職経験から「働く・転職するメイド」へ関心を広げ、また数年後にはマネージャー経験や業務定義への意識の高まりから、「執事やハウスキーパーのマネジメント」に興味を持ちました。



 さらに20世紀の「使用人問題」を学ぶ中で「働きやすさ・労働環境」や、「日本を含む世界各国での使用人問題」に目が向きました。出版時によく聞かれたので「日本の現代メイド事情(コンテンツ軸)」も整理しました。そして今、「現代の英国メイド事情(移民・子育て・繰り返す使用人問題)」へと辿り着きました。



 同人イベントで多様な同人サークルが個々の表現を行うことが同人表現の裾野を広げるように、私も「メイド」というテーマの裾野を自分なりに広げたつもりです。



 メイドがいた時代が終わり、それが現代にどう繋がるのか?

 近代の英国と、現代の英国から見える「メイド」とは何か?

 『英国メイドの世界』の総仕上げとなる本書を、お楽しみいただければ幸いです。




『英国メイドがいた時代』の補足情報

『英国メイドがいた時代』が繋がっていくテーマの補足(2011/08/06)


既刊の紹介・振り返り

同人誌既刊

2001〜2006年までの同人誌紹介:メイドさんを追いかけた六年〜同人誌で振り返る(2006/12/28)

2007〜2009年までの同人誌紹介:2007〜2009年の新刊/9年間の同人活動を振り返る(2009/12/28)



2010年は夏コミの新刊と、出版記念コラボイベントで製作した同人誌2冊を刊行しています。



英国メイドにまつわる7つの話と展望

英国メイド好きの世界


同人誌の電子書籍

2011年07月に、『英国メイドにまつわる7つの話と展望』と『英国執事の流儀』をそれぞれパブーで公開しました。



『英国メイドにまつわる7つの話と展望』をパブーで公開・パブーの便利さは異常(2011/07/17)

執事の働き方・エピソード集『英国執事の流儀』パブーで販売開始(2011/07/20)