ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

イギリス小説のススメ

時期が時期だけに、そろそろ入稿の準備に突入します。結局、今回の企画モノ「イギリスドラマのメイドさん」は先送りすることにしました。代わりに、『Upstairs Downstairs』と『MANOR HOUSE』を中心にした、何かしらの短めのコラムを書くことにしました。



それでは明らかに物足りないので、なるべく今回は屋敷に関する資料を多めにしていきます。小説はやや練りきれず、1作は次回以降に回そうかと思っています。ひとまず予定の68ページで、07/10の入稿を目処に、進んでいます。



いよいよ、ポワロのアニメが今度の日曜日に放送ですね。ポワロが里見浩太郎だったのにはびっくりです。おかしいです、人選が。里見浩太郎というと時代劇、『忠臣蔵』『白虎隊』『田原坂』世代なのでなんだか切ないです……



「おー、もなーみ」「のんのん!」「まどまぜる」なんて、あやしいフランス語の熊倉一雄チックに言ってくれないんでしょうか。どっちかというと、ワトソンや『名探偵ホームズ』の警部っぽくて、いやーんな感じです。見てのお楽しみでしょうね。



とか言いながら、クリスティ文庫の『ナイルに死す』を買いました。クリスティ作品は高校時代に読んだきりなので、犯人をうっすらと覚えていますが、話の筋立てをほとんど忘れていますので、得した気分?です。肝心の内容はといえば、カントリーハウスらしき描写が出てきました。



富豪を父に持つリネット・リッジウェイは貴族からカントリーハウスを買い、彼女の潤沢な資金で整備します。カントリーハウスを所有する貴族の青年から求婚されていても、彼女は自身が「育てた」カントリーハウスに愛着を持ち、結婚を拒否してしまう……とも読み取れるような流れです。



その彼女はしっかりと、メイドを雇っています。やはりクリスティ作品は「メイド+カントリーハウス」の宝庫です。舞台はナイルなんですが、これらを知ると、クリスティ作品が1.5〜2倍(推定)面白くなりますね。



あとは岩波版の『ハーディ短編集』(新潮文庫版と重なるのも多いですが)と、『オーウェル評論集』を買いました。どこかしら「マイナー」な匂いのする19〜20世紀の作家が、本当、好きなんですね。どちらもイギリスですし……



ハーディを読み直していて、ふと「The Son's Veto」を思い出しました。メイドの子が身分違いの結婚をする、という物語です。以前は「三つ編み」「身分違い」の部分しか読んでいませんでしたが、よく考えると、「メイドのままの母」と、「父の息子」の「階級意識」の差が、ものすごく面白い・リアルなんですね。相変わらず、「あの一瞬さえなければ」という悲劇ばかりですが、あらゆる意味でハーディはすごいなと、再確認しました。