ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

『エマ』5巻

エマ (5) (ビームコミックス)


4巻では筆が走っていた森薫先生の勢いにつられて一気に読みましたが、今回は「描いていて本当に楽しいんだろうなぁ」と、自分の美しいと思うもの、描きたいものを描く、それが随所から伝わってきていました。



ヴィクトリア朝でも、メイドでも、それらが個々の要素としてあるのではなく、人物と風景がなじんでいる、物語と調和した、ひとつの完成した姿があります。小説に感じた違和感が、一気に洗い流されました。



もはや人物を描くだけで、意識せずとも自然にヴィクトリア朝という背景世界を伝えられるレベルに達している、そう感じた5巻です。当たり前のように風景に調和して、当たり前のように価値観を再現する。憧れる境地ですね。



特に今回は、「エマが綺麗だなぁ」と思えるような描写も多く、いい表情ばかりです。P.076からの、エマがメイドの制服に着替えていくシーンも、素晴らしいです。普通だったら、逆の描写ですよね。



物語は佳境に入りつつありますが(髭親父も登場)、このテンポで最後まで描ききって欲しいものです。



個人的なお気に入りは、裏表紙です。



キッチンの様子、生活の風景。



初めから「名作」だったわけではないと思いますが、筆者の成長と共に作品も「名作」になっていった、作品ではないでしょうか。そうした経過を、何年間も楽しめる時間をもらえたことが、ただ嬉しいです。



コミックスの『エマ』は、こういうところも含めて、『エマ』なのです。次はどんな驚きを、楽しみをくれるのでしょうか?



『エマ』の世界に興味のある方には、こちらの本/音楽/映像をオススメ中です。