実は、最初の頃は『エマ』の為にビームを買っていましたが、段々と買うのを忘れたり、立ち読みで済ませるようになりました。ビームの中にあるマンガの多くは久我の好みに合わない、で、あえて読んでも読後感のいいものが少ない、のです。
そんなこともあって、今月号の『エマ』も立ち読みしました。で、本屋でいろいろと他の本を探していたのですが、やっぱり、買うことにしました。それだけ、今月号の『エマ』は、コミックス収録を待ちきれないぐらいに綺麗で、何度も読み直したいものでした。
今回の作品は、非常に実験的です。今までは「ケリーの若い頃」「エレノアの後日談」など、主要登場人物のエピソード、どちらかというとキャラクターが主役でした。しかし、今回の『エマ』は、久我が理想としている世界を、ヴィクトリア朝とその時代の人、そして使用人を、綺麗な群像劇として描き出しました。
何人もの登場人物。
彼らにまつわるストーリー。
そして、彼らが存在する風景。
まさしく、「描きたいものだけを描く」
「ストーリー上の必要があるから描く」制約から解放された森薫先生の今回の短編は、見事です。一つ一つの風景、エピソードが完成しています。『シャーリー』も完成した作品ですが、『エマ』を完結させたその後、まだ「成長している」森薫先生に、驚きました。
『エマ』では時に、「ヴィクトリア朝」が際立ちすぎることがありましたが、多分、今までの森薫先生の作品の中で、最も「ヴィクトリア朝らしく、貴族、あの時代の人々、メイドたち、使用人たちとすべてが調和している」物語です。
まだ見ていない方は、是非、読んでみて下さい。すっと心に染みとおります。
これは、マンガ、或いは映像でしか表現できない美しい世界ですし、アニメのスタッフには、これを是非、極上の映像に仕上げて欲しいです。(もしくは実写化)
あの世界を、描きたいです。来年の目標、森薫先生に絵を描いてもらえるだけの物語・世界を書く、です。
好きだったのは、階段の下から見上げる玄関(多分、こういう構図の絵を意識的に描いた漫画家は森薫先生が初めてでは?)、それにコックのエピソードです。久我は今回、新刊の『ヴィクトリア朝の暮らし8巻』でコックの短編を描きましたので、もしも森薫先生のエピソードが気に入ったならば、是非、読んで欲しい、と思います。
来月はターシャ、です。