ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

フレデリック・ゴースト

最高クラスの貴族たちに仕えたフットマン

もうひとりはフレデリック・ゴースト。もう何度もおなじみ過ぎますが、彼はグラッドストーンの甥の屋敷に勤めたり、エドワード七世の傍で役目を務めたポートランド公爵のフットマンになったことでバッキンガム宮殿に出入りしたりと、ほぼ考えられる限り、最高レベルの職場で働きました。



『Of Carriages and Kings』



彼の資料が興味深いのは、一種の「成長物語」「立身出世」を体現しているからです。パン屋の息子が雑用の仕事から始まり、如何にして王宮に入れるぐらいにまでなったのか? 使用人という世界を通じて描かれる最盛期の上流階級の暮らし、そして彼らを支えた使用人自身の世界は、とても面白いです。



ただ、残念なことにフレデリック・ゴーストは途中でキャリアを捨て、手記は終わってしまいます。執事や上級使用人としてどう振舞ったのか、という点では、やや物足りなくなってしまうのです。