ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

DVD『Treats From The Edwardian Country House』

早いもので『MANOR HOUSE』を書いてから、一ヶ月が経ったんですね。



片手間に見ていたDVD『Treats From The Edwardian Country House』ですが、腰をすえて見るとものすごく面白いです。謎のイギリス人Hugh氏はその筋では有名なようで、現代を生きるひとり版『MANAR HOUSE』といった感じです。



1部では「花」を扱います。最初に花市場に行き、花を買います。そこで顎鬚を生やした金髪の青年からエドワード朝に関わる膨大な花を渡され、当時の人たちが「花言葉」で気持ちを伝えていたというエピソードを教わります。



そして次に、香水師に会い、エドワード朝の花から作られた香水を楽しみます。当時の香水は花を原料としていて、その辺りはカントリーハウスのStillRoom(蒸留室)とも関わりを持ちます。



元々のStillRoomは薬品を蒸留する為でしたが、その原料には薔薇の花やハーブなど、様々な植物が使われ、そうした植物の蒸留水はそのまま香水になりました。当時の薬のレシピなどでは、よく「薔薇の水」が出てきますが、家庭内で作れる屋敷もあったのです。



次に彼は蘭の職人の元を尋ねます。そこで蘭は、当時「マニア」が生まれたという話を教わります。最後に前に日記に書いた、「バスソルト」を作りに、アロマ?香水?のお店を訪ねます。そこで乾燥させたラベンダーと、そのオイル、そして塩をモスリンの布で包んでバスソルトを作ります。(店員のおばさんのエプロンはメイドさんエプロンでした)



『エマ』3巻のあとがきで森薫先生が書いていたり、『イギリス手作りの生活誌』、或いは『THE COUNTRY HOUSE SERVANT』に出ていますが、ラベンダーは香りがよく、その上で虫除け(Moss:蛾)の効果がありましたので、衣料品との相性は抜群でした。



MANOR HOUSE』のDVDでは出ていませんでしたが、今見ているHugh氏のDVDでは、『MANOR HOUSE』で撮影された、関連する映像を織り込んでいます。その中のひとつに、レディーズメイドが主人の髪の手入れにラベンダー水を使ったり、リネン室でメイドたちがラベンダーの包みを引き出しに入れているというシーンもありました。



最後かどうか忘れましたが、エドワード朝のディナーを飾った「ゼリー作り」にHugh氏は挑みます。オレンジやレモンの皮やハーブ、そこにゼラチン(ゼラチンは市販のもののようです。『英国ヴィクトリア朝のキッチン』には、当時と今のゼラチンの強度が違うのか?をゼリー協会に問い合わせたなんていう記述がありましたね)を加えて、煮立てます。



面白かったのは、その後、卵の殻を砕いて、白身と一緒に入れたことです。これによってゼリーの透明度が増すそうです。その後、ゼリー袋で漉し、それを型に入れて冷やします。作る際、彼はPrimRoseの花を型の最下部に入れてゼリーを少しかけ、固まったらさらのそれを囲むように花を幾つも置いて、固めていくという方法で、内部に花を飾る仕掛けを見せてくれます。



これだけで、だいたい25分ぐらい、高密度の番組です。第二部、第三部はまた書きますが、第二部では朝食やお菓子、蜂蜜、第三部ではディナーとデザートでアイスを作ります。『英国ヴィクトリア朝のキッチン』でボム(砲弾)と呼ばれるアイスの型が紹介されていますが、まさにそれが出てきます。



DVDにはレシピもついていて、すぐにも挑戦できそうです。Hugh氏のホームページはhttp://www.rivercottage.net/index.jspです。このDVD以外の、『Rivercottage』という方で有名みたいです。