ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

ハウスキーパーやコック

始めました。



どこにどの情報があるのか、何の仕事をしていたのか? ハウスキーパーとコックと侍女はサンプルが増えてレベルが上がりましたが、ガヴァネスはなかなか増えません。使用人中心の資料を集めてもガヴァネスの登場シーンが少ないのです。



ガヴァネス単体での資料本を買うのが望ましいようではありますが、どちらかというと「貴族の子供」とのかかわりが多いので、その観点の資料から探すのがよい感じです。新規に総合的な資料も購入したので、そちらの読解も始めます。



それにしても、Jean Rennieの手記は『Below Stairs』よりもキッチンの描写が詳しかったです。怪我をしたときの悲惨さ、火傷の恐怖などは実体験からにじみ出る重さがありました。また、『MANOR HOUSE』のシェフが部下のメイドに対して厳しい人でしたが、その理由というか、彼に共通するものを、過去のコックやシェフは備えていた理由もなんとなくわかりました。



シェフやコックは他の使用人の仕事よりも失敗が許されない環境にあります。特にゲストをもてなすならば、尚更です。複雑な料理は材料の準備から時間がかかり、失敗をしたら、取り戻せるかもわからない。しかも、火を扱い、火傷をしそうな環境にあっては、素人や考えの甘い人間がいること自体が、失敗を招きかねません。



料理を出さなければならないプレッシャーと、無事に終わらせる為の義務感を追求すれば、プロフェッショナリズムの欠片の無いメンバーとの仕事は無理でしょうし、そうした自覚が無い人間を「鍛える」方向に向かってしまうのでしょう。Jeanはそうした厳しいシェフの下で追い詰められましたが、逆に、自分が上司になったときにそれが出来なかったが故に、部下を十分にコントロール出来ませんでした。



何事もバランスが大切です。厳しすぎては人が辞めるだけです。結局、そこでまた新しい不慣れな人間を雇い、教育に時間を費やすのは無駄だとも思うのですが、こういうのは現代の会社の環境を想起させます。他にもコック関係では、「王室に仕えた」使用人の本があったので、今、その意味ではコック・キッチンメイド・スカラリーメイドが、大変充実しています。



あれ、ハウスキーパーはあんまり無い?



以下、ほんの雑談です。



ふと道を歩いていて、「日本人がメイドを描くこと」と「アメリカ人がサムライを描くこと」は似ているのかなぁと思いました。どちらも自分の国に普通にいた存在ではない、しかし、何かしら憧れや共感を持って、異国の存在を描こうとしているところが、です。