ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

2009年を振り返る&2010年へ

毎年新年は前年の振り返りを行っています。


5位:同人誌頒布累計丸8年で16冊刊行/頒布実績累計は1万部を突破

2001年12月の委託による初参加から、2009年12月の冬コミ参加で、サークル参加は丸8年となりました。(同人活動自体は2000年から準備を始め、落ち続けたものの、2001年に製作を開始。活動自体は2001-2009年で丸9年)



2001年初参加4部という実績から徐々に新しい出会いを経て、2009年末での頒布累計が、1万部を突破しました。これまですべてのコミケ当選(15回連続)で新刊を作る記録を維持したことが再来訪のきっかけとなったと思いますが、個人でここまで続けられたのは、感慨深いものがあります。(1度のコミケで1万部を出す超大手が、どれだけ巨大かも理解いただけるかと……)



年間平均1,250冊、1種類あたり約600冊の頒布部数は、同人・オリジナル・資料系では十分すぎる数字だと思います。



2010年は同人活動10周年目です。終わりが見えてくる時期で、個人の人生経験としては良い物を得られましたし、「非・エロ」「非・プロ」「非・二次創作」「非・マンガ表現」のジャンルでもここまでできたことで、同人ジャンルの裾野の広さを証明し、これまで先人たちが維持してきた「同人イベントという場」にひとつの色を残せたとも思います。


4位:『英国執事の流儀』を作れたこと

個人的に『英国メイドの世界』で燃え尽きた後に、高い満足度で作れたのが『英国執事の流儀』でした。あれを書くことで、まったく新しい切り口を提案し、読者の方にも「日本では読んだことがない」オリジナルな価値を提供できたと思います。



作るまでに時間はかかりましたが、「メイドや執事に興味をない人に読んでもらえるか?」というテーマ設定があり、その克服を行えた一冊なのではないかと。物を伝える視点や読者の方との接点の作り方を考え抜き、実行して、比較的受け入れていただけたようでもあり、自分の基準と読者の方との基準がずれていない、との感覚も得られました。



読者の方へ提供できた価値があったと思いつつ、あれを書くことで、執事により深い関心を自分自身が抱けましたし、良い出会いがありました。もっと多くの、イギリス執事に出会いたいです。



今後、資料を読む際に同様の視点を意識することで、その可能性は高まったと思いますし、ハウスキーパーやメイドでも同様の本を作りたいです。


3位:資料運に恵まれる

今年はとにかく、『英国メイドの世界』で足りなかったことを補うため、必死に勉強しました。「イギリス史と関連するメイドの授業ができる」ぐらいには、その歴史を自分の中に叩き込みました。



正統的なイギリス史や産業革命、商品経済や20世紀の労働問題、貴族の衰退などへの理解を深めることで、今まで接していた知識を別の角度で照らすことができましたし、メイドを軸に視点を構築できたので、「この時代、この社会でのメイドの位置づけはどうなのか?」と、相互の視点で照らしあうことが可能になりました。



使用人の歴史・佳境と、書籍として伝えることの再整理中



原書の拡充では相当良い資料の発掘に成功し、長年入手したかった資料で手に入っていないものは、あとは2冊だけです。イギリスに行かずともネットを通じて入手できる資料の多さに愕然とした一年でもありますし、今後、Google Booksを含めて、「情報を見つける能力」が、より必要になることを感じました。



多分、今回の書籍化で伝えきれるのは100のうち10〜20です。残りは形や機会を変えて、今後も書き続けようと思います。


2位:多くの方に出会う/気づきを得る/学ぶ

今年は活動をしたり見ているものを描くことで、他の方がそれをどのように受け止めているのかを可視化する機会に恵まれました。また、普通にしていたらお会いすることがない方々にもお会いする機会を得て、多くを学びました。



以下、いくつか代表的なものです。



・『英国貴族の城館』著者の田中亮三先生にお会いする

英会話学校終了。語ること、伝えることの楽しさと難しさを学ぶ

大学時代の友人と10年ぶりに再会/香港への赴任&英語とメイドの話を聞く

・日本ヴィクトリア朝文化研究学会でお話を伺う&来年の定期刊行物への寄稿が決まる

・『英国メイドの世界』をシャッツキステ

同人誌を1トン刷る/印刷所を活用した同人活動を書き、反響にて関心の高さを知る

メイドや執事の労働環境と、階級の違いによる差異を書き、労働問題との関連の強さを学ぶ

・出版の編集・校正作業を通じての欠点の自覚と、足りない視点の学び

森薫先生のサイン会に行く。



他にもいろいろとありますので、書ける時期が来たら書きます。


1位:『英国メイドの世界』出版決定と作業の本格化

今年の年始に「2008年」を振り返ったときの1位なので、本来的には1位ではないのですが、とにかくこの作業に時間を費やしました。費やした上で終わっていませんが、原稿はほぼ完了しており、これより形を整えて磨きをかける段階です。



「現時点の自分が持てる最高を出しつくす」スタンスは同人誌でも商業でも関係がなく、「同人誌と同じ内容を、商業で出す」レベルを超え、「ただ今の自分で作れる最高の資料本」を目指しました。



内容の判断は出版後にお読みいただくしかありませんが、バランスを整えつつ、曖昧性を排除し、理解できるベースをしっかり構築した上で建てているので、以前よりバランスがよく、理解しやすい内容になったと思います。



「個人のコレクション」から「公開する博物館」へ



プロモーション活動の提案を主体的に行い、「どうしたら自分の本に接点を持ってくれる読者にであるか」も考えていますし、準備をしています。同人経験から、本を作ることは終わりではなく、始まりに過ぎないと考えています。イベントのスペースで待っていても、人が通らなければ本は評価されません。過剰に本が作られて返本されていく現状では、筆者として最大限の努力をする、少なくとも「誰に読んで欲しいのか」を考えて、届けていく工夫は必要に思えるので、やっていきます。



講談社BOXから『英国メイドの世界』を来年春予定で出版します



ここも含めて、今は楽しんでいます。



年賀状をいただきました。実感が湧いてきます。






総括:色の深みを増した1年

今年の年初、友人から「輝きの強さを増すのではなく、色を増やす方が良いよ」とアドバイスを貰いました。久我は一極集中、目的を追求すると他が見えにくくなるタイプで、時に排他性が強くなるのを心配してくれてのものです。ひとつのことに集中して輝きを強めていくと、燃え尽きてしまう可能性がありました。



それは多分、自分にずっと付きまとう課題だと、この言葉に出会ったときに感じました。実際に今年一年、周期的に自分の作業に没頭したくて殻に閉じこもり、メンタル的に追い詰められたことがあります。自ら、繋がりを絶っていく、周囲の色を減らすことで、より輝きを強めるような。



しかし、結果として輝きの強さを増すのではなく、同じ色のまま深さを増せた1年とできたように思えます。趣味に特化した方向ではありましたが、今年は本当に多くの出会いがありました。それだけ、過去も含めて、少なからず動き回っていたことが今、いくつか形を結び始めています。



それに限らず、出会った人から、自分に関心を持つ他の方の話を何度か聞くことがありました。今年以降はそうした方たちと直接出会えるのではないか、そう思えるのです。組み合わさったら面白いものを作りたいです。


今年の抱負

・本を出版する&プロセスを楽しみ、読者の方に出会う

・本の反響の結果を、いろいろと広げていく

・メイド研究同人活動の区切りとして、20世紀の使用人事情を扱う

・イギリス屋敷への橋頭堡を築く

・英語力(TOEFL)を高める

・小説を書く



今年も、よろしくお願いいたします。