ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

出版社名公開は12月・現在はテキスト原稿終盤

原稿の話

今のところ、『英国メイドの世界』で扱った使用人の職種に、7巻で扱った男性使用人(ボーイ・フットマン・ゲームキーパー・コーチマン/グルーム・ガーデナー)を追加する予定です。方向性は「屋敷で働く使用人の仕事大全」のようなもので、『英国メイドの世界』と同じですが、個々の項目については具体的なエピソードを追加・整理し、内容に厚みを増すようにしています。



現時点で残りの原稿はわずかです。職種は「ガーデナー」が残り10%程度で、他の使用人の原稿は完了しています。「使用人の歴史」を9月中に書き直すというか、再構築する予定です。これで原稿が完成すると、デザインに当て込みつつ、図表を揃えていく段階に入ります。



9巻で扱ったスチュワードは今回含めませんでした。まだ書き直す余地が多く、伝えたいポイントが他と異なるからです。同人誌5〜7巻は職種というよりも日常生活の方向性なので、もしも今回のが成功して次回の機会がもらえるならば、そちらをうまくまとめて出せたら良いなぁと思っています。もちろん、同人レベルでの出版も考えていますし、増強するだけのネタも揃っていますが、書き直す時間が今はないので、ここまでで思考を止めています。


校正の話

他に、校正も並行して行っており、こちらも時間がかかる領域です。引用の英文翻訳も今までは「わかりやすさ・抄訳」的にした部分もありましたが、今回は出版社の方針として、「文法的に正しい翻訳」をしていただいています。



その資料準備が非常に大変で、「原書の資料準備+引用箇所の英文を明示」しなければなりません。筆者である久我はコピーした原書のフォントや文字構成から、どこに何があるのかを思い出せる確率が高いのですが、編集の方はゼロからの準備なので、時間が数倍かかってしまいます。なので、ここ最近はその資料準備を手伝うことにしています。効率的なコピー方法も開発しましたが、後になればなるほど詰め込んでしまって、資料が多く、反省しきりです。



そもそも的に、こうした引用や根拠を明示した本を作るのは大学の先生や研究のプロたちです。その道の長い専門家故に、原書とつき合わせるレベルの校正がほぼ不要なはずです。実績のない自分には、そこが出版に費やす時間の多さにもなりました。今回は2002〜2005年の時期の作り直しも含まれており、未熟な翻訳もありました。これを教訓に自分の英語力を高めること、その機会を作っていく大切さを実感しました。



『エマ ヴィクトリアンガイド』や『図解メイド』とは、マーケットが似ていますが、作り方がまったく違っていますし、費やす時間と再利用性(文中で気になったところを遡及するためにどの本を読めば良いのか)も異なっています。その点で、専門性が高い校正の方をアテンドしてくださった出版社、そして編集の方と出会えたのは、予期せぬ幸運でした。


発表と販売について

最近編集の方と相談し、出版社名公開が12月目処で決まりました。その頃にはある程度コンテンツが仕上がり、スケジュールがしっかり見えている、との判断です。現状のまま推移すれば、その通りにいけると思います。それ以降に、出版社へのアプローチや選んだ理由、そして出会った結果に知った想定していなかった大きなメリットを書くつもりです。



自分は同人活動で、数多くの体験を意識的にしてきた方だと思います。以前エントリで書いたように、イベントに参加しても人が通らなければ読まれません。同じように、出版されたとしても、今の時代は見つけてもらいにくい状況にあります。近所の書店に足を運ぶだけでも、本の種類のあまりの多さに絶望しそうです。しかし、その中から、いかに見つけてもらうか、どうしたら「潜在的に欲しいと思っている」方に出会えるのかを考えるのは、非常に楽しいことです。



接点つくりの考え方は、同人イベントで読者の方との会話で教わりました。



ウェブとリアル、両方で考えることですが、コンテンツ作成が落ち着いた時期にしっかりと編集の方と、「出会うために」「気づいてもらうために」何が出来るのか、プランを作り上げていこうと思います。ネットでは主体的に自分でやってみるつもりで準備中で、原稿が上がってから徐々に実施していきます。





読まれないと存在しないも同じで、読まれる努力を積極的にしたいと思っている筆者は珍しいようですが、自分が伝えたいものがあって本にする以上、伝えたい相手に努力して届ける・見つけてもらうのは筆者として行えることですし、コストを投じて一緒にやってくれている出版社への恩返しでもあります。少なくとも、書店での本の洪水を見ると、その意識は強まります。最近はこういうのも読みました。



【なぜ本は売れないのか】(上)着いたその日に返本

http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090920/bks0909200759000-n1.htm



多分、自分で伝えようという発想が出来るのは「小説」ではないからです。小説の面白さは主観的で伝えにくく、作者が自分で声に出しにくいものですが、今作っている本、そしてこれまで作ってきた同人誌は「なかなか存在しない知識」や「読んで得したと思える情報」を取り扱っているので、読者の方が得るメリットを筆者が伝えやすくなっています。



というのを思っていたところ、新刊のご感想もいただけました。


[web拍手]ありがとうございます!

>09/08 09時
>09/13 23時
>09/14 18時
>09/18 10時


>09/18 21時



ご感想、ありがとうございます! 執事が現代人でも考えそうなことを思い、仕事の中に取り入れていたのに気づいた時、多くの人に伝えたいと思いました。それが、このような形で反響をいただけたこと、感謝しております。元気が出ました。



出版に向けては上記のとおりで、地味にではありますが、進行中です。今後とも楽しんでいただけるものを作れるよう、発見や気づきがあるものを目指して、頑張ります。