ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

森薫先生の旅行記更新・ブレナムパレス

イギリス旅行記 その3が更新されていました。チャーチルの生家モルーバラ公爵家の屋敷ですね。ドラマ『ブライズヘッド再び』(Brideshead Revisited)の舞台になり、英国で最も有名なカントリーハウスのひとつカースル・ハワードと同じ建築家ヴァンブラのデザインのはずです。



絢爛豪華でゴシック入ったような建築様式と記憶しています。パレス(宮殿)なので、カントリーハウスよりも豪華です。どっちのカントリーハウスの家族もナニーと関わりが深く、今、資料を読んでいるところなので、ちょっと親近感がわきます。



非常に詳細な旅行記なので、多分、制作に3時間ぐらいかかっているはずです(自分の体験談)。このペースで続くのか不安になりますが、身体を壊さない範囲で英国の様子を伝えていただければと思います。



英国は屋敷の中の写真撮影が原則的に禁じられていて、資料収集はちょっと辛いです。その点、フランスはほとんどの建物で撮影が許可されていましたのが意外でした。お国柄の違いなのでしょうか? ビジネスモデルの違いなのでしょうか?



そして森薫先生はまだ、メイドに遭遇していないです。


コミックス『エマ』関係の話

全然関係ない話かもしれませんが、今日、新宿の紀伊国屋(古い方)のコミックス売り場(エスカレータで上がる2階)に行きました。そこで『エマ』8巻限定版(沢山のメイドが表紙)と、イラスト入りのしおりを挟んだ既刊が売っていました。



まだ売っています、ということで。



エマ 8巻(DVD付き特装版) (BEAM COMIX)

エマ 8巻(DVD付き特装版) (BEAM COMIX)




森薫先生の旅行記更新・オックスフォード

イギリス旅行記 その2が更新されていました。



これ本当に「短期のブログ」なのでしょうか? ずっと公開しておいて欲しいですね。前回の旅行記も、友人と共にイギリス旅行をする契機となっただけのエネルギーを持った文章でしたので。



そしてまだメイドに遭遇していないと言う展開。



いったい屋敷やメイドに出会ったら、どうなるのでしょうか?



2週間分、このペースで書き続けるのは相当大変だと思いますが、写真つきで出版してくれたら買います。



他に、イラストの方も更新されています。


森薫先生帰国&旅行記開始!

イギリス旅行記 その1(『ヘリオトロープ』)



森薫先生の公式ブログに上がっていました。




ナチュラルに撮影されるのはどうかと(笑)

制服が好きなんですね、本当に。



同行した村上リコさんのブログにも旅行記が出ています。



かえってきました(また)(『村上リコの本棚』)



久我も英国に行きたいですが語学がまだ不完全であり、また次に行くならば自分にとって行く価値のあること(旅行ではなく研究をしたい)をしたいので、一年後ぐらいかなぁと思い描いています。


森薫先生の本棚





森薫先生が『COMICS DRAWING』の表紙・巻頭特集で登場しているこの雑誌を買いました。何よりも興味深かったのは、森薫先生の仕事場の書棚です。圧巻と言うレベルで、稠密に描かれたヴィクトリア朝を描くのに費やされた書籍の数々には、ただ圧倒されます。



久我は自分でも相当英書を持っているつもりでしたが、ジャンルが限定されていて、狭いです。森薫先生は作品の世界を再現する為、衣装や小物、建物や家具、食事やインド、イートン校やらとにもかくにもあらゆる資料を収集しており、作品で垣間見える世界は、蒸留・凝集された、氷山の一角でしかないとあらためて認識しました。



『エマ』は、なんて贅沢な作品なのでしょうか。



書斎を見て思い起こすのは、司馬遼太郎記念館です。久我の最も好きな作家は司馬遼太郎さんで、一度だけ司馬遼太郎記念館に足を運びました。生前住まわれた家の敷地内に隣接する記念館は、司馬遼太郎さんの莫大な数の蔵書が収蔵されています。



その中にいると、まるで司馬遼太郎さんの頭の中を覗き込んだような、小宇宙の中にいるような、そんな錯覚に襲われます。(たまたま今月五月、友人の結婚式で京都に行く折、再来訪してきます)



そして、たとえば司馬遼太郎さんがあとがきで触れていた『シュテファン・ツヴァイク』の「人類の星の時間」を司馬さんの書棚で見つけたときは、「あぁ、あのあとがきの本か」と言う感想と共に、「あぁ、この本は日本でも読めるんだ。今、読みたい」と思ったものです。読みたい本ばかりでした。



人類の星の時間 (みすずライブラリー)

人類の星の時間 (みすずライブラリー)





思い起こせば、『坂の上の雲』にめちゃくちゃはまり、広瀬武夫秋山真之の留学時代を研究した島田謹二氏の研究資料も買った記憶があります。久我が大好きで大好きでしょうがないあの頃のロシアに広瀬武夫は渡り、またイギリスにも滞在しています。









最近買った『図説イングランド海軍の歴史』を途中まで読んでいますが、文中には秋山真之が私淑したアメリカ海軍アルフレッド・マハンへの言及もあり、いろいろなものがいろいろなところでリンクしていて、迷子になりそうです。



図説イングランド海軍の歴史

図説イングランド海軍の歴史





前述の『人類の星の時間』には、久我が大好きなドストエフスキーに捧げられたテキストや、メイドさんを育てた?音楽『メサイア』にて書きましたが、作曲家ヘンデルの話も出ています。この繋がりで、2005年にはイギリス旅行時、ヘンデルの関わった孤児院(予定6:Foundling Hospital)にも行きました。



作品という結果だけではなく、そのプロセスで使われた資料も知りたくなる、その繋がりでどこまでも広がっていく情報の海におぼれていく自分の病気は昔からあったみたいです。そして今回、森薫先生の書斎を拝見し、同じように、「あぁ、この本を読んでみたい」と思い、早速AMAZONで注文しました。



Victorian & Edwardian Fashions for Women, 1840-1919 (Schiffer Book for Collectors)

Victorian & Edwardian Fashions for Women, 1840-1919 (Schiffer Book for Collectors)





やばいです。文化について、資料本について、もっともっと教えて欲しいですし、話をしてみたいです。



しかし、友人の本棚に意外な本を見つけて驚く、ということがありますが、個人的に驚いたのは「ほり・のぶゆき」先生のコミックスがあったことでしょうか。杉良太郎→「江戸の黒豹」→『江戸むらさき特急』。



森薫先生ファンに強くオススメします。『江戸むらさき特急』ではなく、この雑誌を。







幸村誠さんの同様の特集もあって、そっちも劇的に面白いです。同じイギリス。時代が違いますが、作家さんがどのようにコミックスへ仕上げていくかの光景は、大好きです。映画のメイキング映像も好きなんですよね。



高エネルギーを貰いましたが、貰いすぎて、作業が進みません。


『エマ』10巻・感想

目次

  • 総論としての感想(ネタバレなし)
  • 『エマ』と出会って変わった人生? 作品から受け取ったもの
  • 10巻各エピソード感想:後日更新




総論としての感想(ネタバレなし)

本日、書店にて『エマ』10巻を買いました。19世紀末のイギリスを舞台に、上流階級の紳士とメイドが恋をする、という物語もついに最終巻を迎えました。



初めて『エマ』に接したのは2002年の大晦日コミケ初参加の翌日でした。当時はまだ1巻を買ったばかりでした。メイドを主役に物語として、実に丁寧に生活風景を描いていて、すぐにファンになりました。



それから実に五年以上の歳月が流れて、ここに終わりを迎えました。(森薫先生のあとがきでは、6年に及ぶ連載とのこと)



最初に最終巻の感想を言うならば、「7巻でメイド・エマの物語は完結」「10巻で、物語『エマ』の世界が完成」だと思います。



7巻で『エマ』の物語は終わりました。しかし、自分としてそれはあまりすっきりした終わりではありませんでした。過去にも書きましたが、後半は「物語を書くことが優先し、最初の頃にあった好きで好きでどうしようもない明るさ・朗らかさ」が感じられませんでした。



最後の場面では当時の絵のようなタッチでウィリアムとエマが並んで歩く構図で終わって行きますが、どこかそれは明るさを感じないものでした。8巻からはそうした制約が解けたのか、好きなものを書いているのが伝わってきて、世界が明るくなった感じがします。



そして最終10巻、最後の大団円のところまでの流れは、今までに登場したキャラクターや、あの世界に生きる人々を要所要所に織り込みながら、とにかく躍動して、生き生きとして、輝くような時間を描ききったと思います。



そのあまりに眩しい世界は、7巻の終わりが「『エマ』という物語の完結」ならば、今回の最終巻の終わりは「森薫という作家が描いた『世界』の完成・終幕」と言う言葉がふさわしいと思います。生きていることへの肯定、踊りや人間としての感情の吐露、メイドが好きだという森薫先生ならではの喜びや明るさは、作品世界を暖かなもので満たしました。





背景やイギリス世界の描き込みの非凡さは元々際立っていましたが、今回はそれ以上に、生きている人間をその情熱で、照らし出しました。



終わるのが惜しく思える。



読んでいて気持ちが明るくなる。



ここまで登場人物の笑顔にあふれた作品はありません。



これが、森薫先生だ、という極致の結末です。



6年間、お疲れ様でした。



この日記に、しばらくの間、一話一話の感想を書き足していこうと思います。久我の中ではアデーレがやばいです。ストップ高です。明日も明後日もストップ高です。



エマ 10巻 (BEAM COMIX)

エマ 10巻 (BEAM COMIX)




『エマ』と出会って変わった人生? 作品から受け取ったもの

『エマ』と言う作品は、久我の人生を変えました。



『エマ』がなければ、ここまでメイドや屋敷に深入りしなかったかもしれませんし、そうした世界に興味を持つ人に出会えたなかったとも思います。久我は『エマ』を知る前に、メイドと屋敷の同人活動を始めていましたが、『エマ』をきっかけに、多くの方に出会えました。



また英国への初旅行も、森薫先生の日記に触発されたところも大きかったです。



一緒に英国へ行った友人も、森薫先生の日記を読んで、「行こう、イギリス」と後押ししてくれました。それがなければ、今こうして英語を勉強し、またこの界隈での活動に楽しみを見出せていなかったかもしれません。



もちろん、何をきっかけにするかは、自分次第です。人生を変える出来事なんて、よほどのことがない限り、ありません。ただそのきっかけで、自分の人生を変えるかどうかです。しかし、「そのきっかけ」として、人を動かすだけの作品、エネルギーを持った作品だったと思うのです。



いったい、どれだけ多くの人がイギリスに興味を持ったか?



また、メイドや執事に興味を持ったのか?



そして森薫先生に押された「スイッチ」で、突っ走ってしまったのか?



森薫先生というある種、「スイッチが入ったまま突っ走っている」先人(久我がニ号生ならば、三号生筆頭)がいましたので、久我は自分自身の活動や情熱にリミットを設けず、走ることが出来ました。



今の人生を好きですから、いい作品を、人生のきっかけを、ありがとうございました!



……人のせいにしているわけではないですよ?



しかし、このように書いていて、もう『エマ』について、新しい単行本の話を書くこともないと思うと、急に寂しさが募ってきました。その寂しさの理由のひとつは、『エマ』Under the Rose』以降、久我の魂に響くメイドや屋敷のコミックスに出会っていないからかもしれません。


10巻各エピソード感想:後日更新