ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

DVD『MANOR HOUSE』

さて、数日前に「久々に最高の資料に出会った」と書きました。映像資料系では『Upstairs Downstairs』に比肩し、『Gosford Park』などにも見劣りしないものです。



その映像DVDが、手元に届きました。



単刀直入に言えば、これはかつてNHKで放送した『19世紀の暮らしを再現する番組』の、「屋敷版」です。イギリスの放送局がカントリーハウスを貸し切り、素人のキャストを集めて、その中でエドワード朝(ヴィクトリア朝の直後)の生活様式で、三ヶ月間、暮らしてもらうというものです。



当然、主人だけではなく、メイドさんもいます。(眼鏡・リアル『エマ』は言い過ぎ?)使用人も数多く、ヒエラルキーも、『Upstairs Downstairs』を踏襲しています。映像は屋敷内の暮らしを映し出すという、「ノンフィクション」です。



『Gosford Park』が2001年、その影響を受けて2002年と最近に作られたと思われます。今、欧米でも「カントリーハウス」「ヴィクトリアンな雰囲気」が、静かなブームとして盛り上がっているようです。



この映像との出会いは、ほんの偶然でした。「屋敷系の資料が欲しいなぁ」「あ、MANOR HOUSEだって」と、買ってみた本が、「この映像の再録本」だったのです。感度を様々に広げていると、自然といい本や資料にも出会いやすくなります。



ちなみに、こちらに公式サイトがあります。



http://www.pbs.org/manorhouse/



Amazon.co.jpでも買えます。



少しだけ(最初の20分)見た感想です。



まず、屋敷に使用人が集められるところから始まります。彼らの役割と、これまでの経歴(つまりは本職)が紹介され、『Rule』が上級使用人から下級使用人に伝達されます。中でも「メイド役の人に妊娠しているか」を聞くだけではなく、「当時のナプキンの使用」の説明をしているのは、ものすごいリアル路線です。「ハウスキーパーはチェックした」、という百年前のルールに対して、メイドの子は苦笑します。

このエピソードは、英書『THE RISE AND FALL OF THE VICTORIAN SERVANT』で紹介されています。メイドの妊娠を防ぐ為に、女主人の中にこうした「定期点検」をしていた、そこまで再現するのかと、正直、驚きました。(実際の本番では特にしていませんでしたし、同書によれば、そこまでした女主人はわずかだったそうです)



さらに「風呂は一週間に一回」「チェインバーポット(おまる)の使用」「その処理は最下級の使用人が行う」ところまで、徹底しています。正直なところ、キャスティングされた現代人にとっては、「その当時の価値観に染まりきるまで」、精神的苦痛に見舞われる仕打ちが、続きそうです。



食事の光景もドラマにあるような「少しの掛け合い」があるようなものではなく、「厳格な執事が取り仕切り、沈黙が支配する」雰囲気満点、見ていて胃が痛くなります。



これはメイドさんが好きな人や、屋敷ファン、ヴィクトリア朝関連に関心を持つ人すべてに見て欲しい、「リアル路線」のドキュメンタリーです。果たして見ているこちらが最後までのほほんと感想を書けるのか、自信が無いです。