『ロードス島戦記』の水野良先生が所属し、TRPGでおなじみのグループSNE。そこから生み出されたシナリオの数々、短編集やリプレイには、様々な個性があります。その中でもっとも大好きな人が、「と学会」の方で有名になっている、山本弘先生です。
『時の果てのフェブラリー』『ラプラスの魔』『パラケルススの魔剣』、『妖魔夜行』シリーズ、それに数々のリプレイ。TRPGを離れすぎて久しい久我ですが、先日、母校の文化祭(TRPGサークルの仲間に会いに)を尋ねた折に、たまたま平積みされている一冊の本が目に入りました。
- 作者: 山本弘,李夏紀
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/05/31
- メディア: 単行本
- 購入: 9人 クリック: 138回
- この商品を含むブログ (121件) を見る
思わず手にして、買いました。
ネットという情報が錯綜する場所で、今まで一度も見つけなかったこと。
TRPGの仲間に会いに行って、見つけたこと。
そこに偶然を感じました。
素晴らしく綺麗で、山本弘先生らしい物語でした。TRPGを織り交ぜつつ、ロールプレイを織り交ぜつつ、それでいて物語の意味や、生死、価値観、現代に対しても無力ではなく、未来に対しての希望があり、生きることを問いかける一冊です。
様々な作品が世の中に氾濫する中、あえて物語を描くならば、これぐらい、伝わるものがあって欲しいものです。甘い甘いお菓子ばかりを作るよりも、こういう突き刺さるものを、作りたい。
素晴らしい一冊でした。
TRPGをここまで昇華した、TRPG出身の作家は他にいないでしょうし、TRPGを知り尽くせばこそ、描けた一作ですが、その言葉だけでは語れません。ただそれだけではなく、「と学会」やTRPGを離れた山本弘先生の生き方、見てきた世界の深さに、魅入られます。
思い出の場所に戻った日に、出会った一冊。
山本弘先生が妻と娘に捧げたこの本は、今年、いちばん響きました。
この日記が、新しい「偶然」のきっかけになることを願って。