ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

十九世紀スイスの国民画家が描いた至高の「三つ編み」

京都での友人の結婚式の前に一通り観光をしていましたが、京都伊勢丹に貼られていたポスターに目を奪われました。スイスの画家アルベール・アンカー(1831-1910)の美術展をやっていたのです。







少女が、三つ編みを編んでいる瞬間
を描いています。



アンカーの絵画展は東京で開催され(Bunkamura/アンカー展)、その時は別の絵が広告に使われていました。絵は好みの画風でしたが、「スイスの画家だからいいかなぁ? 忙しいし」と美術展には行きませんでした。



それが旅先の京都で再会する、しかも東京とは違う絵をメインに打ち出し、さらに久我が最近話題にしていた三つ編みとあっては、見に行かざるを得ません。



元々、十九世紀半ばやそれ以降の農村の生活風景が好きです。しかし、当時の画家(少なくとも興味範囲である英国と、有名なフランスの画家)の絵画の多くは、あまり地味な生活風景を描いていませんし、国境と時代を多分超えきれず、美術を詳しく知らない久我の情報網ではキャッチできません。



アンカーの絵は、どういう経緯か不明ですが、国境を越えました。スイスでは「国民画家」として親しまれているほどに有名な画家で、日本に伝わっていないだけでした。



素朴な農村の生活風景を、しっかり描いた画家。暖炉の炎に照らされる祖父と孫、鶏にえさをあげる姿、大きなパンを抱えて家に帰る少女、そして「三つ編み画家」と思えるほどに、数多く描かれた三つ編み。



実際に見た本物の絵は、金色の髪の質感が繊細で、三つ編みの緻密な描き方が尋常ではありません。写真やポスターでは伝えきれないレベルです。思いがけずに本物を鑑賞できて、本当に運が良かったです。



パンを抱えて帰る少女と言う構図は、画家の絵として初めて見ました。そういうふうに、「当時あった風景を、見たことが無い世界を、伝えてくれた」画家と出会えたのは本当に僥倖でした。



多分、「様々な縁に恵まれている」というのは、「好きなもの同士を関連させるアンテナが広がっていて、今まで見えなかったものが見えるようになった」ということもあるでしょうね。



いろいろとありますが、相変わらず自分は自分でした(笑)