ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

ハウスキーパーはなぜ鍵束をぶら下げているのか?

今回コミティア83ではお隣の方が北欧神話の創作をされている方で、いろいろと興味深い話を伺いました。



女神転生』やTRPGをやっていたことで「ロキ」「オーディン」など少しは知っていますが、名前ぐらいです。たとえばそれが「文字」として伝わったのか、「口伝」で伝わったのか、いつぐらいに生まれたのかなど、まったく知りませんでした。



西洋史を授業で受けていませんし、自分の興味範囲も古代ローマか、中世か、ヴィクトリア朝か、というレベルなのですが、北欧の国々の歴史や神話、「エッダ」や「サガ」について教わりました。



また、お話していてひとつ面白い指摘を受けました。



ハウスキーパーが権威の象徴として鍵をぶら下げていると昨日のブログで書きましたが、北欧神話でも「家の女主人が様々な鍵をぶら下げている」と言う話があるそうなのです。フランス/グリム童話「青髭」でも、「妻に信頼の証として、青髭が鍵を渡す」箇所があると指摘され、鍵に何かしら込められているのではないかとも。



久我は「ハウスキーパー→鍵をぶら下げている」を鵜呑みにしていましたが、確かに、「なぜぶら下げていなければならないのか?」を考えたことはありませんでした。「鍵束をぶら下げる・鍵が権威になる」という着想は、どこから登場したのでしょうか? こうした習慣がいつ起こったのか、触れている資料本には出会ったことがありません。(看守だと夢が無いですが)



ヨーロッパでは共通認識として当たり前なのかもしれませんが(他の時代の歴史を勉強していれば出てくる?)、女性であるハウスキーパーが登場して権威を持ち始めたのは少なくとも17世紀後半か、18世紀以降だと思いますので、その頃からでしょうか?



たとえば「スティルルーム」という蒸留室で過去に女主人が薬草や薔薇を蒸留して香水や薬を作っていたのをハウスキーパー(スティルルーム・メイド)が引き継いだように、どこかのタイミングで女主人か、近代にいた代理人(貴族の領地代理人・家政の責任者・家臣に近い)から、その役割を継いだのではないかと思います。



そういえば、屋敷の案内もハウスキーパーはしています。普段、屋敷で使っていない部屋には「鍵」を掛けることもありました。主人が倫敦の屋敷(タウンハウス)に滞在する折も、ハウスキーパーは領地の屋敷(カントリーハウス)を守りました。



食料保管庫や陶器室など、様々な貴重品を管理する部屋の鍵を預かっているので、ぶら下げた方が単純に使い勝手がいいからなのかもしれませんが、同じような立場にいる執事にこうしたエピソードはありませんね。映画『秘密の花園』で、ハウスキーパーのメドロック夫人はぶら下げた鍵束を使っていました。



「すぐ使えるように」という観点、あるかもしれません。



というふうに、まったく違うジャンルなのですが、同じヨーロッパ、そして過去の時代・文化を題材にしている点で、重なり合うものや今まで気づかないものを学べたことに、感銘を受けました。



こちらの同人誌にも関心を示していただけましたので、ヴィクトリア朝や屋敷の魅力にも目覚めていただければ(笑) そういえば昔、ケルト神話ギリシャ神話の本をかなり読んでいました(新紀元社やちくま)。



最近、それに繋がるものといえば『Fate』……