ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

DVD『Treats From The Edwardian Country House』

MANOR HOUSE』の料理を扱ったという、DVD『Treats From The Edwardian Country House』と、『英国ヴィクトリア朝のキッチン』が作られる契機となった直前の番組、『The Victorian Kitchen Garden』が届きました。



前者を見始めていますが、ロンゲのイギリス人が現代の専門店(花屋・レストラン・香水店など)をいろいろ訪問し、ドラマの舞台となったエドワード朝の様々なレシピ(洗い物をしたりもしています)を試す内容です。



MANOR HOUSE』のチャリティーの際にメイドさんが作っていたバスソルトを再現するのですが、番組の終わりでこの男がひとり、風呂につかり、足を伸ばして「極楽」というような顔でいます。また、ヴィクトリア朝でもそうですが、ミセス・ビートンのレシピのためか有名な朝食、キドニー(羊の腎臓)の炒め物もひとりで作り、ひとりでおいしそうに食べています。



キドニーは何度か本で見ていましたし、カラー写真を見ていても「おいしそうに思えない」のですが、今回、映像を見ると食べたくなりました。



あの『MANOR HOUSE』のキッチンのシーンが再現されているかと思いきや、そうでもなく、現代人が材料をそろえて自分の家で試すばかりです。しかし、そのまま真似出来そうなので、意外といい番組かもしれません。



同人誌として扱うには、料理はものすごく範囲が広いのですが、料理マニュアル本である『ミセス・ビートンの家政読本』も読み込んで、頑張ります。


DVD『Upstairs Downstairs』

そんな話はさておき、ようやく5シリーズ全68話の『Upstairs Downstairs』を見終わりました。驚いたことに、ヒロインGeoginaの危機を救い、結婚した貴族(侯爵?)の青年は、このDVDを買うよりも前に買った、『Brideshead Revisited』でセバスチャン役を演じていた青年(Anthony Andrews)でした。顔立ちが似ていたのでもしや、と思いましたが、『Upstairs Downstairs』の出演が、『Brideshead Revisited』に繋がったんでしょうか?



最終回は感慨深くもあり、涙してしまいました。1904年から29年の、25年間に及ぶ壮大な物語でした。第五シリーズは怒涛の展開で、執事Mr.Hudsonとメイドとの結婚騒動なんかもあり、いろいろな意味で楽しめました。今年の夏コミの同人誌では、このドラマの特集を組むつもりです。



ちなみに今日も明日も会社ですが。

DVD『MANOR HOUSE』

さて、数日前に「久々に最高の資料に出会った」と書きました。映像資料系では『Upstairs Downstairs』に比肩し、『Gosford Park』などにも見劣りしないものです。



その映像DVDが、手元に届きました。



単刀直入に言えば、これはかつてNHKで放送した『19世紀の暮らしを再現する番組』の、「屋敷版」です。イギリスの放送局がカントリーハウスを貸し切り、素人のキャストを集めて、その中でエドワード朝(ヴィクトリア朝の直後)の生活様式で、三ヶ月間、暮らしてもらうというものです。



当然、主人だけではなく、メイドさんもいます。(眼鏡・リアル『エマ』は言い過ぎ?)使用人も数多く、ヒエラルキーも、『Upstairs Downstairs』を踏襲しています。映像は屋敷内の暮らしを映し出すという、「ノンフィクション」です。



『Gosford Park』が2001年、その影響を受けて2002年と最近に作られたと思われます。今、欧米でも「カントリーハウス」「ヴィクトリアンな雰囲気」が、静かなブームとして盛り上がっているようです。



この映像との出会いは、ほんの偶然でした。「屋敷系の資料が欲しいなぁ」「あ、MANOR HOUSEだって」と、買ってみた本が、「この映像の再録本」だったのです。感度を様々に広げていると、自然といい本や資料にも出会いやすくなります。



ちなみに、こちらに公式サイトがあります。



http://www.pbs.org/manorhouse/



Amazon.co.jpでも買えます。



少しだけ(最初の20分)見た感想です。



まず、屋敷に使用人が集められるところから始まります。彼らの役割と、これまでの経歴(つまりは本職)が紹介され、『Rule』が上級使用人から下級使用人に伝達されます。中でも「メイド役の人に妊娠しているか」を聞くだけではなく、「当時のナプキンの使用」の説明をしているのは、ものすごいリアル路線です。「ハウスキーパーはチェックした」、という百年前のルールに対して、メイドの子は苦笑します。

このエピソードは、英書『THE RISE AND FALL OF THE VICTORIAN SERVANT』で紹介されています。メイドの妊娠を防ぐ為に、女主人の中にこうした「定期点検」をしていた、そこまで再現するのかと、正直、驚きました。(実際の本番では特にしていませんでしたし、同書によれば、そこまでした女主人はわずかだったそうです)



さらに「風呂は一週間に一回」「チェインバーポット(おまる)の使用」「その処理は最下級の使用人が行う」ところまで、徹底しています。正直なところ、キャスティングされた現代人にとっては、「その当時の価値観に染まりきるまで」、精神的苦痛に見舞われる仕打ちが、続きそうです。



食事の光景もドラマにあるような「少しの掛け合い」があるようなものではなく、「厳格な執事が取り仕切り、沈黙が支配する」雰囲気満点、見ていて胃が痛くなります。



これはメイドさんが好きな人や、屋敷ファン、ヴィクトリア朝関連に関心を持つ人すべてに見て欲しい、「リアル路線」のドキュメンタリーです。果たして見ているこちらが最後までのほほんと感想を書けるのか、自信が無いです。

DVD『Upstairs Downstairs』

久しぶりに集中して『Upstairs Downstairs』を見ました。時間的に集中しただけで、気持ち的にはアイロンを掛けながらなので、あまり集中していませんでしたが。



違った角度でのコメントになりますが、戦時中だけあって、各人が「使用人職を離れて国家のために」働いています。Rubyは工場へ、Edwardは戦場へ、Mr.Hudsonは臨時の警官として、そしてRoseはバスガイドとして。



主人階級のGeoginaもナースとして、勤めに出ています。別に制服マニアでもないんですが、当時のメイド、バスガイド、ナースと、戦時中の制服が出揃っています。



この同じ頃、ベルギーからの避難民の中に、スタイルズ荘に身を寄せている、「エルキュール・ポワロ」がいます。錯綜する世界が繋がった感覚は、なかなかに気持ちいいものです。



このところ創作をしていなかった反動か、ドラマを見ている間に、超短編のプロットが三本、出来上がりました。ネット上か同人誌かわかりませんが、メイドさん百人を登場させる物語に、挑戦しようかとも思います。



さて、久しぶりに『エマ』森薫先生のサイトを見ましたが、日記の中でお母さんが逝去されたことにふれられていました。また、コミケDR.モローさんの絵でおなじみの、イワエモンさんも亡くなられたとのことです。



謹んでご冥福をお祈りいたします。



生きている間に、何を残せるのか、消費するだけではなく、形あるものを残したい、自分が光を当て、誰かに受け継がれていく、そういった気持ちこそが、自分にとっての創作の原動力です。



時間を大切に、その上で自分が喜び、人が楽しめるようなものを作っていけたらと、気持ちを新たに新年度を始めようと思います。

DVD『Upstairs Downstairs』

第3シリーズに登場する綺麗なメイドDaizyですが、従僕のEdwardとくっついてしまいました。女性と見れば手当たり次第にセクハラしてきたEdward、戦争に行くことを決めてから、Daizyとの距離は一気に縮まります。



そんな使用人同士の恋と婚約を、苦々しく思うのはMr.Hudson。ずっとEdwardと一緒だったのに、あまり可愛くないRubyに幸せは訪れません。



ちょっとショッキングというのか、さすがイギリス人というのか、昨日見た話のラストシーンは、全国のヴィクトリアン・ファンには衝撃的かもしれません。



Edwardが私室で寝ていると、Daizyが別れを惜しんでやってきます。抱いてほしいという彼女にEdwardは「子供ができたら使用人として働けない」(僕は戦争で出かけてしまうし)というような発言をしたら、Daizyは「私のことは私が自分できちんとできる」「子供も育てる」と、Edwardを励まします。



その後は「私は初めてなの」「あなたは初めてなの? 従僕って出かけた他の屋敷でそこのメイドとかと機会があるんでしょ?(Edwardはフランス人のメイドに誘われるが、入ろうとしたその部屋にその屋敷の主人が入っていくのを目撃)」と言われると、「僕も初めてだよ」と応じて、そのまま抱き合って、その話が終わります。



ここだけ英語がしっかりと聞き取れている? 気のせいです(笑)



結論としては「髪を解いた姿もいいなぁ」という感想に落ち着きました。



その一方、健気なお姉さん的存在のRoseは不幸です。おつかいで、Mrs.Bridgesの作ったケーキを持参してバスに乗りますが、隣に座ろうとした男が誤って潰してしまい、彼に弁償させる為に、ケーキ屋さんに行きます。



そこにくっついていた喫茶店で話をするうちにふたりは付き合い始めます。彼はオーストラリア人、農場の妻になることに反対する周囲の声をよそに、Roseは婚約して、オーストラリアに行くことを決めて、出発しますが、その当日に……



Roseは第2シリーズでも馬鹿なElizabethのせいで刑務所に収容されたり、この後もフィアンセが戦死する運命などが待ち受けているようです。Sarahと知り合ったのが、運のつきでしょうか。



あまり関係ないですが今日、『金スマ』を見ていると、イタリアの富豪の女性が出ていました。日本人の母を持つ彼女の再現ドラマ、なんとイタリアの屋敷では若くて意地悪なメイドさんがいっぱいいました。



その上、父親が彼女に「屋敷の女主人」をやらせようとしたところ、使用人たちが反発したとか。それを日本人であることへの差別のように描写していましたが、戦後であっても、国が違っても、使用人の伝統が生き続けているならば、半分ぐらいは使用人の反発も正当かと。



来ている服のしわをとってといった彼女に、メイドがアイロンを直接当てるというのはやりすぎですが……

DVD『Upstairs Downstairs』

結局、映画は来週にしました。土曜日と日曜日を使って、ドラマ視聴と読書で時間をすごしました。『Upstairs Downstairs』は第3シリーズまで見終わりました。これで39話/68話、折り返し地点を通過しました。



第3シリーズはRichard Bellamyの夫人Lady Marjorieが第一話の終わりで逝去するという波乱の幕開けで始まります。



これまでの主役Elizabethが登場せず、長男のJamesが父の秘書(Respectableな職業・タイピスト)のHazel Forrestと結婚し、新婚生活を営むという流れです。



しかしJamesはSarahを妊娠させ、インドから連れてきた婚約者とも別れただけあって、「オンナスキー」の習性が抜けきらず、Dianaという女性とHazelの前でいちゃつき、従妹(Lady Marjorieの弟の娘)Geoginaに好意を見せたり、Hazelの流産なども重なり、夫婦仲は冷え切っています。



そんな中で、ようやく「若く綺麗なメイド」が出てきました。Daizyと言うアンダー・ハウスメイドです。彼女の初登場の回に出てきたGeoginaも綺麗で、画面が急に華やかになりました。



ところが話そのものは次第に戦争の影が色濃く出てきて、第3シリーズの最終回にはベルギーの国王がイギリスの国王に助けを求めるというニュースと、イギリスの参戦が決まりました。軍人であるJamesは出征していく……そんな展開です。



いろいろと見所はありますが、ドラマの話はここまでです。


『Upstairs Downstairs』

『Upstairs〜』を今まで20話ぐらい見てきましたが、全体に使用人同士が自由気ままに振舞っていて、極端な権力の構図は見えません。思ったよりも、みんな「よく言えば和気藹々、悪く言えば悪態をつきながら」、働いているんですね。

久我が今までに描写していた範囲では「かなり主人に服従」していますが、このドラマでは刃向かったり、口論したり、刺々しい絡みが多すぎます。そのせいで早口になって聞き取れない、というのがあるのですが。

また、どの従僕も隙を見てはメイドを無理やり抱え上げたり、セクハラしたりと、忙しいです。男女の交際は望まれていないはずですが、時代が新しくなっているからか、職場が狭いせいか、交流は非常に多いです。

話の筋を書こうと思いましたが、セーラがどうしようもないほどトラブルメーカーで、その話にばかりなりそうなので、控えます。セーラだけではなく、『男版・セーラ』とでも言うべき「お抱え運転手」トーマス・ワトキンスも登場し、このふたりの協奏曲のせいで「いやーん」な展開が続いています。